4663.2020年2月17日(月) 東京高検検事長定年延長に見る首相の思惑

 このところ東京高等検察庁検事長・黒川弘務氏の違法な定年延長が批判的に取り上げられている。普通ならさほど問題にならなかったかも知れないが、そのやり方とタイミングがあまりにも狡からく稚拙だった。政府が黒川高検検事長の定年延長をめぐり、法解釈を変更したのである。

 検察庁法では検察官の定年を63歳、検事総長のみ65歳と定めている。東京高検の黒川弘務検事長は今月7日に定年を迎えるはずだったが、先月末に国家公務員法に基づき急遽黒川氏の定年を半年間、延長する閣議決定をした。これが問題の発端である。1981年に人事院が「検察官と大学教員は既に定年が定められ、国家公務員法の定年制は適用されないことになっている」と国会答弁していた。安倍晋三首相は去る13日の衆院本会議で、かつての解釈については認めたものの、「検察官の勤務延長に国家公務員法の規定が適用されると解釈することにした」と都合よく述べた。つまり法解釈を変更したことになる。新たな政府の見解は、検察庁法の特例が「定年年齢」であり、「定年延長」は特例でないから国家公務員法を適用するという如何にも都合の好い解釈である。詭弁以外の何物でもない。

 黒川氏の定年延長は1月31日の閣議で決まった。65歳が定年の検事総長を除き、一般の検察官の定年は63歳。このため2月8日に63歳となる黒川氏は、検事総長に昇格しない限り、誕生日に定年退官する予定だった。しかし、政府はその直前に「業務遂行上の必要性」を理由に過去に例のない定年延長に踏み切った。この「業務遂行上の必要性」とは何を意味するのか。言うまでもなく明らかである。

 黒川氏の定年延長が決まったのは63歳の誕生日のわずか8日前で、2019年度の補正予算が成立した直後だったが、政界では次期検事総長に子飼いの黒川氏を充てて、検察全体ににらみを利かせるのが官邸の狙いであるとの見方が広がっている。

 黒川氏は法務事務次官を経て2019年1月に検察№2の東京高検検事長に就任した。黒川氏は、検察首脳としてこれまで安倍首相の意向を踏まえて共謀罪などの実現に奔走し、森友学園問題における財務省の公文書改ざん事件でも、佐川宣寿元国税庁長官ら関係者全員の不起訴処分を主導したとされる。このため、政界では「安倍政権のスキャンダルをもみ消す官邸の番人」などと呼ばれてきたという。こういう人物を次の検事総長に任命する思惑で、法がゆがめられることはないだろうか。この人事でルールを自己流に解釈してアウトロー的なことをやった安倍首相なら、何をやっても許されるということになるのではないだろうか。行政の長が、司法の長も兼ねることになったのである。三権分立は崩壊したことになる。これは民主主義の崩壊でもある。それにしても首相を取り巻く腰巾着どもは何をやっているのだろうか。

2020年2月17日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : mr-kondoh.com