4500.2019年9月7日(土) なぜ県は母校通信制課程を閉鎖したのか?

 2年後に母校・神奈川県立湘南高校は創立100周年という祝福すべき節目の年を迎える。そのための行事がいろいろ計画されているようだが、そのひとつに記念誌の発行がある。偶々その記念誌への執筆を依頼された軍事ジャーナリスト小川和久氏と依頼者の母校同窓会元会長・天野武和氏の橋渡しをした中で、図らずも小川氏が卒業した母校通信制閉鎖の件について隠れた事情を知ることになった。

 母校には現在全日制と定時制があるが、かつては通信教育制もあって県外ばかりでなく、母校で学びたいという受験生が全国各地から応募した。

 僭越ではあるが、母校は硬式野球部の甲子園全国優勝を始め、サッカー部の国体優勝や、他の運動部でも栄光ある実績を成し遂げたこともあり、文武両道の高校として比較的知名度が高く通信制生徒が全国から数多く入学を希望した。実際全日制と同様に通信制課程もスポーツが盛んで、定時制・通信制高校野球大会では度々全国優勝の実績もあり、テニスでは杉山愛選手を輩出している。だが、最もユニークな特徴は生徒の大半が横須賀市の自衛隊工科学校生であることである。

 ところが、2004年に神奈川県教育委員会が母校通信制と県立平沼高校通信制を併合させて、横浜修悠館高校という通信制専門の校名で新規スタートすると決定してしまった。この改編には陸上自衛隊が猛反対したようだったが、計画は実行に移された。どうして実績もあり、学校関係者が反対する中で2つの伝統校通信制を閉鎖してまでも新規に通信制高校をオープンさせる必要があったのか、よく理解出来ない。そこには教育的見地よりも財政的理由があったのではないかと勘ぐらざるを得ない。

 そして3年後の2007年母校通信制高校は閉鎖されることになり、母校で閉課程式典が行われた。その折挨拶された母校通信制卒業生で陸上自衛隊陸相補の通信制校長が、今後自衛隊工科学校生徒らに愛唱した湘南高校校歌を歌ってもらうことが出来ないのが悲しいと話されたことが多くの列席者の胸を打った。校歌は北原白秋作詞、山田耕作作曲による格調高いもので、富士山を遠望する情景豊かな学校周辺の情緒を詠った素晴らしい校歌であるだけに、余計そう思われたのではないだろうか。式典に参列された、天野氏もそのスピーチが忘れられないと言っておられる。

 学校の改編などでは悲喜こもごものエピソードや思い出があると思うが、後々までも理解も納得もし難いケースもあるとは思う。しかし、ことが教育に関わることだけに、極力卒業生や関係者の気持ちを忖度され、慎重に検討したうえで配慮して欲しいものである。それにしても在学中直接関係はなかった母校の通信制ではあるが、閉校の裏話を知ると些か身につまされる。

2019年9月7日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : mr-kondoh.com