4501.2019年9月8日(日) イギリスという国の無責任と無情

 香港のデモは5日林鄭月娥・行政府長官が逃亡犯条例撤回を表明して以来表面的には鳴りを潜めているように見えるが、いずれ中国政府が黙ってはいないと思うので、再びもめるような事態が起きることが懸念される。

 実は、今朝TBS「サンデーモーニング」で外交評論家の岡本行夫氏が、1997年イギリスが香港を中国へ返還した際、2047年までの50年の間中国は「1国2制度」を守る約束をしたにも拘わらず、中国政府は香港の自治、民主化を脅かすような圧力を香港に与えているが、これについてイギリス政府は中国に対して約束履行を迫るようなことをしないばかりか、何のコメントも言わない。はっきり言うなら、イギリスは中国政府にあしらわれているのである。イギリスは自国にとって利得がなければ、動かなくなったように見て取れる。それが、例え国際的に大きな問題に発展しようとも、「我関せず」と逃げている。

 香港デモ以外にも、昨年NPO誌上にミヤンマーのロヒンギャ難民問題では、イギリスが戦前に問題の遠因を作っていながら、今日では過去の責任を取ろうとせず見て見ぬフリをして責任逃れをしている狡猾さを非難した拙稿を書いた。現在執筆中で来年には上梓したいと考えているメディア批判書にもイギリスのいくつかの大罪について追及している。かつての大英帝国は、恥も外聞もなく過去に自国が犯した罪悪の責任を取らず、自国の問題だけに固執して一切のプライドをかなぐり捨て、散々抑圧した他国の深刻な問題に見向きもしなくなった。

 偶々最近買い求めた「週刊東洋経済」9月7日号の「GLOBAL EYE」欄に最後の香港提督だった元イギリス保守党議員のクリス・バッテン・オックスフォード大学名誉総長が、今日のイギリス政界、並びにジョンソン首相について厳しく批判している。英国政治は世界の反面教師であると指摘しながら、今や昔の面影は見る影もないと手厳しい。バッテン氏は首相を信用ならない策士と言い、ウソをついて出世してきた人物で自爆も辞さないような性格だと非難している。イギリスは、今やEU離脱問題に追われていて、とても香港の民主化にまで気を配るわけにはいかないことは分かる。

 しかし、それにしても香港返還に際して中国政府と結んだ1国2制度の約束がピンチに晒されているのに、中国政府に抗議をするわけでもなく、成り行きに任せて一切牽制球も送らないのはどういうつもりだと言ってやりたい。結局放り出してそのままトンズラしてしまう安易な国であることが鮮明になった。そうなると不幸なのは、イギリスによって植民地化されていた国々の国民ということになる。英国紳士とは褒め言葉でよく言われるが、ジョンソン首相らイギリス人なんてとんでもない食わせ者だったということになる。

2019年9月8日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : mr-kondoh.com