先日来燃費不正という不祥事で経営不安が囁かれていた三菱自動車だが、実際に販売高が6割も落ちた。前回のリコール隠しの際は、同じ三菱グループが再建に手を貸したが、今回は最大の支援者だった三菱御三家の三菱商事を始め、三菱重工、東京三菱UFJ銀行がそれぞれ苦しいお家の事情を抱えており、結局三菱自動車は三菱グループの支援を得られず、提携関係にあった日産自動車の傘下に入ることになった。プライドの高い三菱マンにとっては、耐えられない屈辱ではないかとその心中を察する。
そして、不正会計が明るみに出て赤字が想定されていた東芝が、昨年度は事業会社として過去最大の営業赤字7,191億円を計上した。
三菱自動車も東芝も経営者の心の中に油断があり、現場サイドまで目を配る配慮に欠けたなれの果てではなかったかと考えている。
その一方で、2015年度決算が3期連続で過去最高益を挙げたトヨタ自動車が、今16年度の決算予想を早くも対前年△40%と予想している。自動車生産量と販売高は順調に伸びると予想しているが、厳しい円高を計算した減益減収である。あの絶好調のトヨタにして、いかに昨年度の決算が円安に依存していたかということがよく分かる。
あまり景気の良くない話の中で、僅かに明るい話題は昨年度に引き続き経常収支の黒字が、前年度のほぼ2倍だったというから喜ばしい。原油安が効いたことが最大の原因のようだが、外国人旅行者の増加による旅行収支の改善も大きく寄与しているようだ。この辺りの状況については別途ペンを執っているので、いずれ1冊の書にまとめて上梓したいと考えている。
さて、今夕のニュースで舞台演出家の蜷川幸雄さんが肺炎による多臓器不全で亡くなられたことを伝えていた。享年80歳である。2000年6月に豪華なツアーを組んでグループを案内し、アテネの王宮前のホテル、グランド・ブリターニュに宿泊した時偶々ロビーで蜷川さんとある歌舞伎役者に会って言葉を交わしたことがある。その年蜷川さんはギリシャ劇10本で構成された「グリークス」を演出している。その他に「王女メディア」は日本国内ばかりでなく、アテネやローマでも公演された。その時蜷川さんは古代ギリシャ劇の演出のためにアテネ市内の古代劇場跡を「現場検証」に来ていた。いつも舞台では、厳しい叱声を飛ばす蜷川さんもその時は至極柔和な表情だったことが思い出される。
蜷川さんはシェークスピア劇をロンドンでも演出したくらい熱心なシェークスピア・ファンだったが、今年はシェークスピアが亡くなってからちょうど400年になる。1616年の没年に肖った映画も製作されたようだ。地味ながらちょっとしたブームである。そういえば、今年も受講することにした駒沢大学マスコミ研究所社会人講座の受講者番号が、何と「1616」である。不思議な因縁を感じる。今にして想う。一度でも蜷川シアターを観ておけば良かったと。蜷川幸雄さんのご冥福を心よりお祈りしたい。