4433.2019年7月2日(火) 商業捕鯨再開は、日本にとってプラスか?

 昨日31年ぶりに商業捕鯨が再開された。一昨日日本が突然国際捕鯨委員会(IWC)から脱退すると表明し、商業捕鯨再開を世界に向かって公表した。再開はまさにその翌日である。これは決して日本にとって待ってましたと喜べるようなことではないようだ。鯨の絶滅を危惧する国際世論に対して、日本は捕獲数を守り、捕獲海域を排他的経済水域(EEZ)内に限定すると約束した。かつての南氷洋における捕鯨とはイメージが大きく異なる。

 30年間捕獲しなかったせいもあり、需要も大きく落ち込んだ。終戦直後には国民が食べる肉食はその半分が鯨肉だったが、今では僅かに0.1%にしか過ぎないという。食べれば食べるほどその割合も増え、価格も下落していくのが普通であるが、鯨肉に限っては捕獲量が限定されているので、天井は見えている。果たして商業的に成り立つのかとの疑問が燻ってる。

 捕鯨基地がある山口県下関市と和歌山県太地町、更に北海道の釧路では、待った甲斐があったと喜びが湧いているようだが、商業捕鯨には将来的に採算性の見通しが立たない。下関や太地では、国の捕鯨予算を当てにしているようだ。下関は安倍首相、太地町は二階自民党幹事長の地元である。いつもながらの嫌らしい政治的な圧力によってこれという将来のビジョンもなく、国際的に反感を買う商業捕鯨がこのまま補助金頼みで続けられて良いものだろうか。

 10年以上も以前に一度国際捕鯨委員会がコンベンションを開催した直後に下関を訪れたことがある。あの時代はまだ捕鯨について懐かしいようなムードがあった。1950年プロ野球が2リーグ制になり「大洋ホエールズ」が新規加入したことにより鯨への愛着が広がった。それが今や国際的反捕鯨団体シー・シェパードのように、調査捕鯨に対しても過激な反対行動が行われる時代になった。

 日本政府も懐古趣味だけに捉われず、外交上、商業上のリスクを精査したうえで商業捕鯨がプラスかマイナスかの結論を出すべきであろう。

 朝日夕刊「素粒子」欄にこんなことが書かれていた。

「31年ぶりに商業捕鯨を再開した日。それは国際協調を重んじてきた戦後日本が、自らの主張が通らぬからと国際機関に背を向けた日でもある」。何やら国論二分になりそうである。

2019年7月2日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : mr-kondoh.com