4408.2019年6月7日(金) 長期在位の安倍首相のレガシーは?

 本日安倍晋三首相は在職日数が、第1次内閣と通算して2721日となり、伊藤博文・初代首相を抜いて歴代首相の中で単独第3位となった。このまま行けば、8月24日には大叔父・佐藤栄作を追い抜き第2位に、11月20日には桂太郎を抜いて日本の総理大臣として在位期間がトップになる。安倍首相が第2次政権で7年半もの間首相の座に留まって来られたのは、野党の力が弱かった幸運と自民党内にはどんぐりの背比べでこれという大物ライバルがいなかったことが大きい。ただ問題は、長ければ佳しとするものではなく、総理大臣である以上在任期間中にどれほどの政治的実績を残せるかという点である。現状では、後世に引き継がれるようなレガシーはあまり期待出来そうもない。長く在位した首相としてクイズの問題に出される程度だろう。

 天皇制の問題として密かに囁かれているのは、首相と平成天皇(現上皇)との間には、考え方に大分開きがあったようで、憲法擁護の上皇と改憲にはやる首相とは憲法観も歴史認識も違うと元朝日の河谷史夫氏は指摘する。海外の戦地まで出かけては戦没者を慰霊していた上皇に比べると首相にはそれほどの気持ちはない。靖国神社参拝に拘るだけである。首相は、災害被災者に接する上皇、上皇后の片膝をついて話される姿を執務室に来た人の前で「こんな格好までしてねぇ」とニヤッとして茶化したという。「選択」6月号に紹介された記事を読むと、首相には悪意があるとしか思えない。

 首相にしてこの程度だから、他の政治家にも程度の低い人物が多いのは当然かも知れない。先月北方4島を訪問して物騒な戦争発言をしてひんしゅくを買った丸山穂高・衆議院議員のような中学生もどきの政治家もいる。昨日丸山議員欠席の衆議院本会議で、丸山議員に対する「糾弾決議」を全会一致で可決した。糾弾決議という言葉は、寡聞にして知らなかったが、決議自体は丸山議員が国会議員として失格だということを全衆議院議員が認めて、直ちに議員を辞職するよう迫ったものである。本人は法的拘束力がないことと、辞職は本人が決めるものだということから引き続きこのまま議員として居座り続ける。政界が腐っていると思うのは、丸山議員が発言の後、所属政党だった「日本維新の会」が丸山氏を直ちに除名したが、党はトカゲのしっぽ切のような辞めさせ方ではなく、党として責任を持って議員に本音と主旨を説明させたうえで責任を取らせて議員辞職をさせるべきだった。

 とにかく、最近の失言続きの状態を見ていても、政治家の劣化は恐るべしと言わざるを得ない。

 さて、過日川崎市登戸駅前でカリタス学園のスクールバスを待っていた小学生が見ず知らずの51歳の男に刃物で殺傷され、男はその場で自殺した。その後元農水次官が自宅で息子を刃物により殺害した事件がクローズアップされた。これに関連して「8050問題」というのが今話題に挙がっている。2つの事件はいずれも「引きこもり」が原因と考えられている。今から20年ほど前には60歳の親が30歳の「引きこもり」の子どもの面倒を見ていたが、今では精神的、肉体的に限界を迎えつつある80歳の親と50歳の「引きこもり」の子の問題が行き詰まる親子の深刻な問題となっている。高齢化した親が介護を受けるようになり、子どもにはそれなりに気になるようだが、さりとてこれを解決出来る良いアイディアは簡単には見つからない。

 「引きこもり」には、学校でのいじめ、職場になじめない、就職活動に失敗した、人間関係がうまくいかなかった、等々原因は多様であるが、その後の人生を引きずって周囲に迷惑をかける人が増えてきた。小学生を襲って自殺した51歳の男は少年期の家庭に問題があったようだが、やはり「引きこもり」となりそれが今回の事件の遠因となった。元農水次官の子息も名門高校時代で挫折して学校を辞め、家庭内に引きこもり、その後ひとり暮らしの中で「引きこもり」状態だったようだ。外から、また後から評論家的にああすれば良かった、こうすれば良かったという話は聞かされるが、所詮当事者でなければ分からないだろうから、根本的な解決のためには厚生労働省が国家として重要課題として受け止め、骨太な対策を講じる必要があると思う。

 これからもこの「8050問題」は、現代の大きな問題として話題になることだろう。

2019年6月7日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : mr-kondoh.com