4357.2019年4月17日(水) 日本の借金財政に異端の経済理論

 現在日本が抱える長期財務残高、つまり借金が2018年度末で1,100兆円を超える巨額に達した。以前から財政破綻が懸念され、小手先の解決策は時折講じられてはきたが、具体的、かつ効果的な対策は実施されなかった。しかし、長期的で抜本的な財政対策を実施することが出来ず、毎年国家財政は赤字を積み重ねるばかりで、いよいよ危険信号が灯っている。

 この点について、一昨日経済開発協力機構(OECD)は対日経済調査報告書の中で、日本経済の人口減少に対して警鐘を鳴らし、プライマリー・バランス(財政の基礎的収支)を黒字化するためには、現在の日本の消費税率8%を最大26%まで引き上げるべきことを提言した。消費税は、今年10月に現在の8%から10%へ引き上げることが決まっているが、その僅か2%の増税でさえ国内では強い反対の声が上がっているほどである。そんな中で26%という数字は目の玉が飛び出るような数字である。しかし、これもこれまで将来について考えない財政政策失敗のツケだと言わざるを得ない。現在の安倍政権になってからこの傾向は一段と強まった。一強他弱に浮かれすぎ、日本の将来を考えず、目先に拘り放漫財政を続けた財政政策の失敗である。

 経済人の中にもかねてより危機感を抱いて警告していた人物がいる。間もなく4年間務めた経済同友会代表幹事を退任する小林喜光・三菱ケミカルホールディングス会長で、終始訴え続けていた財政再建が進まない現状について、「今さえよければ、自分さえよければという考え方が国をダメにする」と空しい気持ちを訴えている。「財政出動や金融緩和をやっても国民は誰も痛まない。だが、それは次の世代、次の次の世代に大きな負担をかける」と言い、皮肉を込めて日本人は「ゆでガエル」だと形容した。

 一方で、異端の経済理論と言われる現代金融理論(Modern Monetary Theory=MMT)では、国は財政赤字が大きくなっても通貨を限度なく発行出来るから、インフレ率が一定水準に達するまでは財政支出をしても問題はないとの理論を展開している。小学生がお金が足りなければどんどん紙幣を印刷すれば好いと言っている感覚と変わらないように思える。ニューヨーク州立大ステファニー・ケルトン教授がこのMMTを積極的に啓蒙しているらしいが、彼女は日本の債務はまったく過大ではないと主張している。こんなMMTのような暴論は今まで聞いたことがなかったので、ホッとする浪費家がいるかも知れないが、これはあくまで例外論であってインフレ率が恐るべき水準に達したらここから抜け出す道はあるのか。見当もつかないだけに素直に受け入れるわけには行くまい。やはり、健全財政を貫くことこそが、経済安定、そして発展の道ではないだろうか。

2019年4月17日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : mr-kondoh.com