4356.2019年4月16日(火) 「パリ中が泣いている」ノートルダム大聖堂火災に

 テレビ画像を見て思わず息を止めた。何とあのノートルダム大聖堂が真っ赤に炎上して尖塔が崩れ落ちてしまったのである。誰もがパリへ行けば必ず訪れる、世界的に名高い世界文化遺産である。年間1,200万人が訪れるという。私も度々訪れたことがあるが、同じ名のマルセイユの丘の上にあるノートルダム大聖堂も2度訪れたことがある。石造りの建物だったので、よもや火災如きで燃えるとは思いも寄らなかった。だが、屋根部分が木造だったために焼け落ちてしまったのだ。この大聖堂ではナポレオン1世の戴冠式が行われ、ジャック・ルイ・ダヴィッドによって描かれたその名画が、近くのルーブル美術館に展示されていて見る度に感慨に耽っていたものである。また、東日本大震災の1年後には、追悼ミサもここで行われた。現在修復工事中だったので、その影響による失火ではないかと見られている。テレビ画像で炎が上がり、火に包まれた尖塔が倒れるシーンには涙が出そうになった。夕方の火災だが外はまだ明るい。取り巻いていたパリ市民は、残念がって大聖堂へ向かって声を合わせ讃美歌を歌っていた。

 大聖堂は、場所的にもパリ発祥の地・セーヌ川中島のシテ島に12世紀に建てられた。ルーブル美術館、オペラ座、凱旋門などからも割合近い。目をつぶればあの威容が浮かんでくる。とりわけ学生時代に観たジーナ・ロロブリジーダとアンソニー・クイーンが主演した映画「ノートルダムのせむし男」のイメージが強く頭に残っている。正面キリストのファサードの下をくぐって聖堂内へ入ると正面上部には素晴らしいステンドグラスと十字架が目に入って来る。3つのバラ窓のひとつは全壊したそうだ。尖塔は全壊したが、幸い16聖人の像は難を逃れたようだ。

 火災現場を訪れたマクロン大統領は、必ず再建すると語ったが、相当な年月を要することだろう。偶々3年前の今日、犠牲者273名を生んだ熊本大震災が発生した。基礎の土台部分が大きく破損した国宝熊本城は現在修復工事が進められている。

 失われた重要な建造物は再建されるケースが多いが、やはり建物自体に染み込まれた歴史が失われることであり、オリジナルとはどうあっても違うと思う。それは戦後間もなく火災に遭った法隆寺金堂や、放火された金閣寺にも言えると思う。再建される大聖堂にフランス人は同じような気持ちを込めることが出来るだろうか。

 さて、昨日このブログに書いた小谷汪之著「中島敦の朝鮮と南洋」(岩波書店発行)を直ぐにアマゾンへ申し込んだところ、早々に今夕届けてくれた。これからゆっくり読んでみようと思っているが、確かに友人が教えてくれたように同書最後の「文献一覧」に著名な金子兜太、志賀重昴、島木健作、矢内原忠雄氏らの著書と並んで、光栄にも拙著「南太平洋の剛腕投手」が紹介されていた。やはり嬉しい気持ちが強い。今執筆中のノンフィクションにも力が入る。

2019年4月16日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : mr-kondoh.com