4329.2019年3月20日(水) 習近平・中国国家主席の強い権力志向

 先日中国の全国人民代表大会(全人代)で、習近平・国家主席が権力集中をスピードアップ化して権力基盤を益々強化していることを知った。特にメディアを通して「学習強国」なんていう陳腐な言葉を強調して習主席を尊敬、敬服させるような動きが見られたのには呆気に取られた。習主席を学んで国を発展、強化する「学習強国」というプロパガンダを通して、周囲は習主席を歩一歩と神格化させている。

 そこへ一昨日習主席は小中高大学で社会主義理論や道徳などを教える教師らを集めた集会で、学校での思想政治教育を強化するよう指示を出した。教育の押しつけである。習主席自身が提唱した政治理念「新時代の中国の特色ある社会主義思想」を通して中国の各学校で愛国心を教える愛国教育に拍車がかかりそうで何やら背筋が寒くなるようだ。具体的には、青少年が愛国心や強国の志、国に報いる行為などを社会主義の発展に生かせるようにし、習主席が今世紀半ばまでの実現を目指す「社会主義現代化強国」建設に役立たせていく考えのようだ。しかし、その反面現代の中国の愛国教育が、他国を誹謗、中傷、非難、批判する教育になっていないか。モラルに欠けるところがありやしないか。

 習主席が、自信たっぷりに「社会主義現代化強国」建設をアピールするのは今に始まったことではない。ただ、その押し付けが過重にしてスピードを伴っていることが問題である。社会主義化をしきりに主張する習主席にしても、はっきり言えば、過去において中国革命実現のために行動し、何らかの貢献をしてきたわけではない。すべて先人が成し遂げたことである。取り敢えず革命を成就させるテーゼを国内に啓発し、革命を学ばせる手段として、中国には実在しない社会主義を学ばせることを標榜したに過ぎない。

 しかし、現代中国の政治、社会体制は真の社会主義体制と言えるだろうか。現実に中国が行っていることはマルクス主義からは遠い夢であり、理想でしかない。習近平主席は独裁体制の下に、成長著しい若手共産党員やライバルを遠ざけ左遷、失脚させて周囲をイエスマンが取り巻き権力基盤を固めている。現実の中国は、貧富の差が激しく、巷に失業者が増え、農業改革は中途半端で失敗し、農村は疲弊している。新疆ウィグル自治区の少数民族や、チベット民族に対する厳しい抑圧的監視状態等々、すべてマルクスが志向する社会主義とは大きな落差がある。思想や国民が感じる経済的実感などでも、発展途上国と考えられているキューバ社会主義国家にも及ばない。実態は、まやかしの経済大国なのである。中国が世界で勝っているのは、13億人と言われる人口だけである。国民の民主主義と、自由と言論の自由を抑圧した現状を愛国教育と称して青少年に押しつけ教育することは、後世国家の発展にとってプラスになるとはとても思えない。

 危険だと感じるのは、反対する常識人を抑圧していることである。実際改革派の学者などからは、行き過ぎた愛国主義や思想統制を懸念する声が出ているようだが、これをまた中国当局は押さえつけようとするのではないだろうか。

 第2の天安門事件が、少しずつ近づいているような気がしている。

2019年3月20日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : mr-kondoh.com