今朝の朝日新聞に興味深い記事が載っている。「札束払いの国・ミャンマー」というもので、ミャンマー(旧ビルマ)の日常の経済生活を紹介したその内容とは、ビルマ人が日常の経済取引にほとんど銀行を介在せず、現金払いをするという今時の社会では考えられない実態である。ちょっとした大型の取引には、売買の当事者はたくさんの札束を持ちこむというから、受け取ってもその札束を数えるのが大変だと思う。銀行間の信用取引もほとんど為されず、国民も銀行に口座を持たず、当然銀行には預金が集まらない。ほとんどが企業内銀行というのだから、その存在感と影響力は推して知るべしである。普通の銀行も先進諸国のように金融資本として隠然たる力を発揮するどころか、融資に回せる資金の余裕がなく、それが経済活動にも制約を加えて経済成長の足かせになっているようだ。
他のアジア諸国に比べてもビルマの銀行預金残高はかなり低い。今天然資源が埋蔵されていることからその将来性は海外資本から大いに注目され、発展途上国の中でもビルマには過大な期待が寄せられている。だが、これから進出を狙う日本企業にしても戸惑いが見られるようである。
ビルマへの戦没者慰霊団を何度もお世話して、度々下見や添乗員として現地へ出かけた。1970年代初頭には、ビルマ航空へ支払う団体の国内線航空運賃や地上費もすべて現金でも持ちこみ、到着日早々に現金を受け取りに来た経理のマネージャーに、現金を支払ったことを思い出す。1団体分の支払額をすべて現金で持って行ったのだが、日本を出国する際申告しなかったので、考えてみるとあれだけ多額の現金を持ち出すことは外為法に違反していなかっただろうかと些か後ろめたい気持ちになる。
我々が度々訪れたあの時代に比べてあまり進歩がないようだ。ただ、政治情勢が不安定のため経済が未だに遅れているが、国内には多くの資源が眠っている。いつの日にか、大手銀行が立派な店舗を構えて国内経済も活発に発展することを期待している
それにしてもしばらくビルマへ出かけていないが、素朴なビルマが懐かしい。