先日ブラジルへ旅行した近所の高校時代の友人にコンタクトをお願いしたブラジルのアミーゴから待ちに待った手紙が届いた。アミーゴは友人に対して私に宛てた手紙を送ったと言ってくれていたが、その手紙は1月11日付きで13日消印のものであり、航空便にしては投函後1カ月半以上も経過して随分時間が経っている。この遅れでは友人がアミーゴのアパートを訪れた今月中旬には、アミーゴは私の手元にすでに件の手紙が届いていたと信じていただろうことは推察できる。それをわが友人が消息を確かめるかの如く唐突に自宅を訪れることになったので、或いは戸惑い不審に思ったかも知れない。でもインターフォンで会話を交わすことができて、元気であり手紙を投函したことを伝えてくれたのである。ともかく手紙の文面を見ると83歳ではあるが、普段は元気であり、今月10日からは南部都市にショート・ステイに出かけると書いてある。お互いに地球の裏側に住んでいるので、そう頻繁に連絡があるわけではないが、細い糸が今もつながっていることが分かってやれやれ一安心である。
一方で、あっという間に亡くなったナイスガイがいる。高校の10年後輩で会社の同僚であり、友人でもあった田渕守くんが、先月11日に突然彼岸へ旅立ってしまった。この友人の人生には厳しいドラマがあった。癌が判明して手術を繰り返し、その後定期的に検査を行って大分安定していると聞いていた。
11月の拙著出版記念会にも出席してくれ、その時やや太り気味でとても癌患者とは思えないほど一見健康体に見え、束の間ではあったが話し合うことができた。10日程前会社の元同僚からその田渕くんが亡くなったと聞いて愕然とした。彼は入社の経緯が異色で、学卒なのに高卒資格で中途入社し、加えて彼の組合における言動が会社と組合にも受け入れられず、一匹オオカミ的な立場に追いやられ我々の目から見ると不遇をかこっていたように思えた。公開の株主総会でも満場の中を挙手起立して質問し、会社側を慌てさせていた。在職中は生涯一現場社員に拘って出世欲は捨て去り働きやすい現場の職場作りに力を注ぎ、退職後も行政書士の資格を得て、働く者のために事務所を開いて相談に乗ったり、講演活動を行っていた。
彼の他界を知ってご遺族に最後の様子をお聞きしようと思い、何度か電話をしたが、いつも留守電だった。止むを得ずFAXに私の気持ちを書いて送ってみたが、これにも何の反応もなかった。あれだけエチケットを弁えていた彼にしてはおかしいなと思っていたところ、今日になって不意に見知らぬ弁護士から手紙を受け取った。そこには田渕くんから遺言執行を依頼されていて自宅点検に訪れた時、私が送ったFAXを読んで私に手紙を送ったと書かれていた。田渕くんは若い時に離婚してそのまま独り住まいだったので、身辺整理をする人がおらず、葬儀で喪主を務めた妹さんも仙台に住んでいて最近の兄の生活やプライバシーがまったく分からないということだった。私のFAXには、ご遺族がお望みなら、彼と私が話しているシーンが映っている出版記念会のDVDをお送りするがどうですかとも書いた。これは遺族が何も言って来なければ、そのままそっとしておいた方が良いのではないかと思っている。
田渕くんとは最近そう度々会うことはなかったが、在職中から親しい後輩で、頭も切れて信頼できる人柄だった。思うことを率直に何でも話すことができた、数少ない友人のひとりだった。彼の永眠は早過ぎる。実に残念でならない。心から好漢田渕くんのご冥福をお祈りしている。 合掌