お彼岸を前に早々にお墓参りを済ませた。横浜の二男家族とともに、妻の実家のお墓がある多磨墓地から、近藤家代々のお墓のある中野の宝仙寺へ廻った。奈良に住む中三の孫が志望高校に入れるようお祈りしたほかにも、ご先祖様にいくつかのお願いごとをした。
早朝から小雨交じりの気象で何となく寒々しい。救いは元気の好い2人の幼い孫である。もうしばらくすると花見で知られる多磨墓地内には桜の花が咲き誇り、訪れる人の目を楽しませてくれるが、流石にこの時期にこの肌寒さでは開花もせず、散歩する人もほとんどいない。多磨墓地でお参りを終えて中野の宝仙寺へ向かう途中でランチタイムになったので、甲州街道に沿った「味の素スタジアム」に隣接するファーストフード・レストランに入ったところ、サッカーJリーグ2部の試合ではあったが開始前ということもあって、多くのファンで混みあっていた。
サッカー人気はともかくとして、ひと頃に比べて日本サッカーの実力は一頓挫しているように感じている。前々回のワールド・カップ南アフリカ大会では予選リーグを突破して、ベスト16に食い込んだが、昨年7月のブラジル大会では期待に反して早々に敗れた。次回大会に向けて新チームがスタートした途端アギーレ新監督がスペインチーム監督時代の買収疑惑によって解任された不幸もある。つい先日漸く後任にボスニア・ヘルツェゴビナ出身のバヒド・ハリルホジッチ氏が決定したところだ。だが、今アジアカップに日本から出場している4つのJリーグチームの戦いぶりは芳しいものではなく、久しぶりにアジアの王者奪還を目指す日本サッカー界には、憂色が漂っている。Jリーグ加盟チームが増え、サッカー人気は高まっているとは言え、日本のサッカーはヨーロッパに比べて歴史も浅く、力もまだ不安定である。いくら投資しても一朝一夕に強くなるものではないことを思い知らされる。
さて、昨日と今日の2日間に亘って民放テレビでシベリア大陸のドキュメンタリー番組が放映された。延4時間の長編なので、ずっと観ているわけにはいかなかったが、これまでに2度シベリアを訪れているので懐かしく楽しむことができた。特に、雪の中を走るシベリア鉄道の車窓外風景と車内光景が殊更懐かしかった。初めて訪れた1991年10月はまだ雪は見られず、バイカル湖水も青く透明だった。学生時代にトルストイの「復活」を読んで感激し、「復活」をトレースしながら一度シベリア大陸を横断してみたいと思っていた。できればシナリオ通り雪の季節に旅してみたいと願い、2003年3月のまだ積雪の多いシーズンにシベリア鉄道で広大な大陸を横断してみた。雪の白樺並木を走り、「復活」のシーンを彷彿とさせる光景にカチューシャこと、カチェリーナ・マースロヴァを追う青年士官ネフリュードフにイメージを重ねてネフリュードフの懺悔と愛情を思い出して感慨に耽ったものである。
今日の番組では、雪と寒さに閉ざされた広大な大陸を雪以外に何も見ることができないような単純な景色の中に、シベリアの奥深い魅力を描きだしてくれたように思っている。