経済紙である日経新聞に昨日珍しくビルマを大きく扱った記事が全2頁に亘って掲載された。それも経済関係のニュースではなく、いずれも仏教寺院を紹介したものである。1頁目は首都ヤンゴン(旧ラングーン)市内のエポック・メーキングな建造物、シュエタゴン・パゴダについて紹介した内容であり、もう1頁はビルマ中部都市パガンのアーナンダ寺院の記事である。これまでに何度も訪れた懐かしい観光スポットである。
ビルマでは全国どこでもパゴダを見ることができる。中には崩れかけて雑草が生い茂っているものもあるが、人家の近くにあるパゴダは今でもほとんどが、信仰心の篤い人々によって大切に保存、管理されている。それらは昔からビルマ人の心の支えとなっている。中でもヤンゴンのシュエタゴン・パゴダは一段と聳え立つように建造され、遠方からでも眺望することができる。特に夜間は明るくライトアップされ、熱心に手を合せているビルマ人の姿は神々しいほどである。
12世紀に栄えたパガン王朝時代に建立されたアーナンダ寺院は、パガン界隈の多くのパゴダの中でも代表的なもので、多くの観光客が訪れる。とりわけ日没前の赤く染まった光景は、えもいわれぬ美しさである。パガンのパゴダ群は実に見事なものだと思うし、静かな環境と相まって訪れる人々の心を打つ。いずれこの辺り一帯が世界遺産として登録されることは間違いないと思う。
近年ビルマにとって残念なことは、先進国との経済協力とか、辺境の少数民族を排除しようとする政府軍の動きぐらいしか話題にならないことである。華があった反体制派のスーチー女史の活動もすっかり影を潜めてしまったかのようである。やはりビルマらしいのは、そういう国際社会から注目されるようなニュースよりも、貧しいながらも昔とあまり変わらない日常生活の中で古くからの伝統的で質素な生活を営んでいる地道な姿が綿々と続いていることである。
さて、今日ドイツのメルケル首相が2日間の予定で7年ぶりに来日した。早速午後朝日新聞社と財団法人ベルリン日独センター共催で講演会が催された。実は私もぜひメルケル首相の話を聴いてみたいと思い聴講を申し込んだが、残念ながら抽選で外れてしまった。ドイツは同じ敗戦国として、またともに戦後復興を遂げた国として日本とよく比較されることがある。ドイツが他国と大きな諍いを起こすことなく平和と安定を享受しているのに引き比べて、日本には依然として近隣の中韓両国とのこじれた関係が続いている。昨日も中国の王毅外相が、反ファシズム戦争勝利・抗日戦争勝利70周年記念行事には、誠意さえあればあらゆる関係国の指導者を招待すると安倍首相に牽制球を送った。
メルケル首相は今日の講演で、ドイツがヨーロッパで和解を進められたのは、ドイツが過去ときちんと向き合ったことと、隣国フランスの寛容さもあったと述べた。わが国に敷衍すれば、大東亜戦争の反省と関係諸国への謝罪を示すことである。これはすでに20年前の村山談話に盛られたことでこれをもう一度安倍首相談話として公表することである。問題は隣国、中国と韓国の日本に対する寛容さである。果たして対日強硬策を取り続けることが、自国民の愛国心を高め、国家を治める最も効果的手段だと思っている、頑なな姿勢の中国と韓国が寛容さを示してくれるだろうか。