案の定と言うべきであろうか、鳩山由紀夫元首相が政府及び外務省の強い反対を押し切ってロシアが強奪したクリミアを訪れ、現地でロシアのクリミア編入を肯定する発言をした。これに関して政府部内から厳しい非難の声が挙がっている。選りに選って鳩山氏は、クリミアのロシア編入は住民投票によりウクライナの憲法に則って平和裏に民主的に行われたと述べた。ロシアでも鳩山氏の行動に高い関心が集まっており、メディアでも報道された。昨日はロシア政府から日本・クリミア友好協会の設立を持ちかけられ、鳩山氏は安易にこれを受け入れた。クリミア共和国の要人とも会談した。懸念されていた通り、すっかりロシア側のペースにはまって行動している節がある。このような事態は日本政府の考え方とはまったく相容れない。これが、かつての日本国総理大臣の行動かと疑問視せざるを得ない。
すっかり鳩山ペースでことを運ばれた原田駐ロシア大使は、すっかりおかんむりである。コメントするに値しないと強い不快感を示した。
「イスラム国」問題が話題となった折に、シリアへ出かけようとした新潟県在住のフォト・ジャーナリストに対して、旅券を取り上げ、応じなければ検挙まで匂わせた外務省の強引な自由束縛の対応に比べて、元首相が相手となるとこうもその行動が違う。いくら国家にとってマイナスだと思えてもクリミア入国を思いとどまらせることができないものか。よほど世間知らずのわがままお坊ちゃまには手を焼いたとみえ、ただ良識に訴えてお願いするだけだったようだ。結果的にお坊ちゃまは制止を振り切って火中へ飛び込んでしまった。事態の深刻さが分からず、それでいて周囲のアドバイスにもまったく聴く耳を持たず、世話の焼けるご仁である。政府は帰国後鳩山氏に対してどういう対応をするのか。場合によっては今後の外交上にも悪影響を残すことになる。
鳩山元首相のクリミア漫遊に比べて、同じ元首相でもパフォーマンス面で人気のあった小泉純一郎氏はシャキッとている。小泉氏は昨日震災の地、福島県喜多方市で福島第一原発廃炉問題についてきちんと誰もが納得できる持論を述べ、原発再稼働にはあくまで反対する立場を訴えた。ドイツのメルケル首相は原発再稼働から原発中止へ考え方を変えたが、当初小泉元首相も原発賛成派だった。だが、原発が安全ではないことが分かって、不安が残るうえに後々まで使用済み核燃料の処分や放射能問題の処理に展望が開けず、今後も貴重な資金と時間を投じることに疑問を感じた。小泉氏は福島事故を機に思い切って自然エネルギーの開発、そして核の廃絶、原発中止へ考えを変えて行った。これは小泉氏自身が強い信念として終生変わらないと公言している。あまりにも軽薄な鳩山氏とは人間的に大きな器の差を感じる。
しかし、安倍政権にとっては鳩山氏も厄介だが、国民的人気のある小泉氏への対応はそれ以上に至難で苦慮しそうだ。小泉氏の論理は、分かりやすく国民が納得して受け入れられるものだからである。
小泉氏は安倍政権の原発政策、及び首相談話について極めて批判的である。
鳩山氏が近日帰国してから、どういう談話を出して、自らの偏屈な立場を主張して政府、国民を理解、納得させることができるか。それ次第ではすでに政治的命運は尽きた鳩山氏だが、人間としても致命的ダメージを受け、いよいよ命脈が尽きることになるのではないだろうか。