昨日「ドローン」というヘリコプターと竹トンボの中間のような空飛ぶ機械物体が、こともあろうに総理大臣官邸の屋上に墜落しているのが見つかった。セキュリティ上厳戒態勢が敷かれている官邸に空から侵入とは恐れ入った仕業である。しかもこの物体がいつ官邸へ墜落したのかもとんと分からないというから防犯上大きな問題である。
ドローンは人間の手が届かない場所や、危険な場所から写真を撮ったり、立体的に空撮したり現代社会で増えてきた難しいニーズに対応してくれ、今後その用途は大いに拡大するものと期待されている。特に、軍隊では無人航空機の操作をすることにより、無駄な犠牲を防げる点が高く評価され、すでに海外では実戦で使用されている。わが国でも防災対策上その出番が増えるのではないかと期待されている。
日本の社会が一般的に規則で行動を縛り過ぎる傾向があることが時折問題になるが、このドローンの使用についてほとんど何の制約や規制もないのが逆に極めて憂慮すべき問題を提起している。僅かに地上250m以下の飛行とか、航空運航地域では150m以下とかの飛行制約はあるが、それ以外はほとんど自由奔放で、一般人が何の許可も要らずに購入できて自由に使用できるというから随分鷹揚なものだと思う。
機種も値段もいろいろあるようだが、仮にもこれは空を自由に飛来するものである。空中権なんてまったく問題にしていない。操縦士はライセンスも要らないとするなら、ちょっとしたことで空から落下する危険は当然考えられる。仮にそのドローンの下を人が歩いていたら怪我をすることは明らかである。大きな事故を発生させる可能性もある。こんな危険なものを操縦するのに、所有者の自由に任せるというのは少々乱暴だと思う。何らかの規制は必要ではないか。昨日今日始まったことではなく、すでにドローンが日本人の間でも使用され始めたことはある程度知られている。それなら交通関係を取り締まっている警察庁がなぜ事前に事故防止のための手を打たないのか、些か怠慢の誹りを免れない。はっきり言って無責任である。
首相官邸のドローンについては、捜査当局が今躍起になって犯人を探しているようだが、かと言ってルール作りを早急にやろうという様子が窺えない。現状では各施設でそれぞれ独自にルール作りを考えさせているようだ。こんなことでもし大事故が起きたらどうするのか。
これは警察庁にとって珍しい大チョンボだと思う。自衛隊の海外派遣などを考えることより、国民の身の回りの危険物の除去に手抜かりがないか、予防策や安全策を講じたり、一部規制なりを考えるのが政治家やお役人たちの責務ではないだろうか。これでは危なっかしくて外もおちおち歩けやしない。