今日は夏も近づく八十八夜で、全国的に暑さも増してきたようだ。そして、明日は憲法記念日である。日本国憲法が施行されたのは、昭和22年の今日、5月3日である。まだ、小学校3年生だったので、当時の実感はもちろんない。だが、その後学校では幸いにも折に触れて憲法について話を聞かされた。果たして現在の学校教育ではどうだろうか。
その中で特に思いだすことが2つある。ひとつは、小中学校を通じてどの先生もみんな新しい現行憲法について、第9条の戦争放棄、憲法改正の条件について語る時現行憲法がいかに優れているかという話をされ、これで戦争はなくなるし、絶対守っていかなければいけないと諭すように話されたことである。新憲法について誇りを抱いているように感じた。
もうひとつは、京都市立上桂中学3年生の社会科教師棚橋先生が、軍備は必要ない。もし、敵が攻めてきても丸裸のままでいて闘うことはないと毅然として言われた。まだあまり事情がよく分からない同級生と私が、それでは他国に侵略されるばかりではないかと質問しても、先生はどうなっても軍備は必要ないし、闘うこともしない方が良いとの持論を強く主張されたことに驚き、それは今もって強く印象に残っている。どうして無抵抗を主張されるのか、先生の真意は分からなかったが、戦争でご家族か親戚の方が惨めな目に遭われたような事実が頭にあったのではないかと勝手に推察している。
あの個性的だった棚橋先生はとうにお亡くなりになったが、軍国的な風潮が出てくる都度棚橋先生の強い信念のようなものが甦って来る。
さて、棚橋先生のお考えとは逆行して、昨今右翼的傾向が強まってきた安倍政権が、改憲への道を歩き始めた。その前に憲法違反のような行動を起こしていることは良識派国民から危惧され恐れられている。
今朝の朝日新聞によると朝日が憲法に関する世論調査を実施し、国民行動の分析を行った。だが、リベラルな朝日が何を考えたのか、分析及び解釈を一般人が分かりにくいものにしてしまった。難しい憲法についてあれこれ条件をつけたような分析調査は避けた方がいい。あまりにも細かく分析しては、憲法自体を分かりにくくさせて庶民の視界から徐々に遠のいていくのではないかと心配になる。憲法改正に国民は賛成なのか、反対なのかという一番肝心な点が、条件をつけ過ぎるためにどう受け取ったら良いのか分かりにくいのである。精々男女別と年令別で分けるくらいの単純な一覧表を作ればよいのではないか。結局今日の朝日の調査報告ははっきりとは分かりにくくしてしまっていた。多少憲法改正反対者(48%)が賛成者(43%)を上回ったという一番知りたい点は何とか分かった。この他に第9条を変えることについては、「変えない(63%)」が「変える(29%)」を圧倒的にリードした。まあそれだけで取り敢えずほっとしている。だが、国民の声を軽視しがちの安倍政権が憲法改正に向けて虎視眈々と次のステップを待っている。まったく目を離せない状態である。
とにかく最近は政府に憲法を無視しているかの言動が目立つ。既成事実を積み重ねて常態化させようとしている傾向が見られることが怖い。戦前の軍部の動きと一脈通じる動きが出てきたように思う。他人事でなく我々国民もよほど自分自身の問題として捉えてどう対処すべきか、よくよく考える必要があると思う。