2917.2015年5月9日(土) 日本の国会議員の劣化ぶり

 月刊誌「選択」5月号の評論「自民党『人材枯渇』が招く国難」が面白い。要は一強多弱に驕る自民党には、かつて見られた選良と呼ばれるような政治家がいなくなって、政治の劣化が甚だしいというものである。その手厳しい批判は、「国会議員の劣化はとどまるところを知らない。一年生議員は言うに及ばず、日本のトップリーダーの首相たる安倍晋三に至るまで例外なき質の低下は目を覆うばかりだ」と遠慮会釈もない。無論これは自民党だけの問題ではない。

 更に掘り下げて今や安定政権となった安倍首相には、逆らうものがいなくなったとか、首相が何をやろうと党から苦言やクレームが出ることはほとんどなくなったとその非難は益々鋭くなっている。そして次のような分析をしている。こうなったのは結果的に2012年の総選挙で自民党に119人もの新人議員が誕生したことが大きい。今では自民党所属衆議院議員291人のうち4割強が1、2年生議員である。まだ政治家として一人前ではなく、敢えて言えば修行中なのである。かつては教育訓練の場でもあった派閥が弱体化して、議員としての本分を磨く場もなく、議員としての自覚が欠如している議員が増えたことが問題となっている。若手議員は放任され、勉強の場がなく、今では単なる採決要員となり閑を持てあましている状態である。それが男女間のスキャンダルになるほど国会議員としてのレベルが深刻化している。男女の国会議員同士が夜道でキスをするような破廉恥事件が週刊誌に面白おかしく取り上げられるお粗末ぶりである。

 元々政界にはできの良くない世襲議員が跋扈している。彼らには知的訓練が不足しているうえに、聞きかじった生半可な知識を振りかざしているだけで、現場に漂う臨場感を身に付ける間もなく、あまつさえ知性を磨いて政治家としての能力を向上させようとの意欲もさらさら見られない。国会へピクニック気分で遊びに来ていると揶揄されるようでは話にならない。未熟者の国会議員は御身大切とばかり、保身ばかり考えてただひたすら安倍首相に取り入ることだけを考えてお追従に走る。

 これでは政治が成熟するわけがない。いずれ国家の方向が宙に舞うだけである。悲しいことに元々政治家としての素養が優れているわけではない安倍首相が、右向けと言えば黙って右を向いているだけのお粗末なノンポリ政治家が増えた。ひとりひとりの国会議員に真剣に国家の将来を考え、国の未来を託せる人が少なくなってきたのである。悲しいことである。これでは日本の将来に希望を持てない。いずれ大きなツケが国民に回って来ることが心配である。

 そんな折も折、5日にアメリカの日本研究者ら187人が、第二次世界大戦以前の慰安婦問題などの史実に向き合い、「偏見なき清算」を目指そうと日本政府に呼び掛けた。その中に著名なエズラ・ボーゲル氏や入江昭・ハーバード大名誉教授も含まれている。

 この声明は一方的に日本政府を責めているわけではない。戦後の日本が果たした役割を評価したうえで、現在なすべきことを首相に直言しているわけである。

 ここでは安倍首相の考えは別にして、前記の通り、頭の思考訓練ができていない精神的にひとり立ちできていない自民党若手議員に、果たしてこの声明を謙虚に受け止め研究者の意に沿った考えを打ち出すことができるだろうか。

2015年5月9日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : mr-kondoh.com