4054.2018年6月19日(火) インドの歴史が書き換えられている。

 歴史は夜作られるとよく言われるが、インドでは今白昼堂々歴史が書き換えられている。4年前にインド人民党のモディ首相が政権を握って以来、その支持母体である「民族義勇団(RSS)」は、ヒンドゥー教の伝統による社会の統合を目指し、ヒンドゥー教以外の事象を極力排除し始めている。

 インドでは、約13億人のうちヒンドゥー教徒が圧倒的に多く約80%を占め、イスラム教徒は15%しかいない。その少数派のイスラム教徒は国民会議派を支持している。それがモディ首相一派には我慢ならないようだ。インドにとって独立運動の過程で最も国民に敬愛された人物は、初代首相ネールと建国の父で暗殺されたマハトマ・ガンジーである。皮肉というべきだろうか、2人の偉人はヒンドゥー教徒ではなく国民会議派のメンバーだった。ともに今もなお全インドの各界各層から広く尊敬されていて、2人については学校で時間をかけて教えているという。モディ首相にはこれをそのまま放っておくわけには行かなくなったのだろうか。

 最近になってその様子が少々変わりつつあるという。連邦制のインドでは、各州によって教科書の内容は州政府が決めるのだが、モディ首相が州首相を務めていたグジャラート州では国民会議派だったネールをすでに教科書から削った。そして今ラジャスタン州でも公立校の社会科教科書からネールに関する記述が削除された。同時にガンジーの暗殺についても触れられていない。偉大な建国の士の存在が意図的に徐々に薄れようとしているのである。国民はこれを一体どう思っているだろうか。RSSは、ガンジーもネールもイスラム教徒に弱腰でヒンドゥー教徒を苦しめたと非難する有様である。

 とにかく根っ子には、人間批判よりヒンドゥー教とイスラム教間の根深い宗教対立があるようだ。歴史書き換えの波は、世界遺産にも及んでいる。例えば、ある州ではタージマハールを観光ガイドブックに紹介していない。イスラム系ムガール帝国の皇帝シャー・ジャハーンが先立った王妃のために建てた涙物語のタージマハールは、インド文化を代表するものではないということのようだ。時の為政者によって先人の偉業が葬られ、自分らに好都合な偉業やレガシーに書き換えられていくというのは、どうにも納得しかねる。これでは、インド独立のため全身をささげた偉人ガンジーやネール首相も浮かばれまい。

 そのうちモディ首相は、世界四大文明からインダス文明を取り下げるなどという暴挙も言いだしかねないのではないか。

 現在安倍政権がこのようにモディ政権と同じことをやるとは思いたくないが、最近の言動をみていると似たようなことをやり始めるような予感がしてならない。

2018年6月19日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : mr-kondoh.com