2922.2015年5月14日(木) 2014年度経常収支黒字を計上

 昨日財務省が発表した2014年度の国際収支統計によると経常収支が7兆8千億円の黒字となった。東日本大震災以来4年ぶりの増加である。増加したからと言っても、かつての右肩上がりの好況時に比べればまだまだ及ばない。10年前には経常収支の黒字は20兆円を超えていた。07年度までは右肩上がりで貿易収支も好調だった。それが08年度から下がり始め、一気に悪くなったのは東日本大震災からである。貿易収支はそれまでの黒字から赤字になり、それは今もって解消しきれていない。ただ、13年度を底にして14年度は赤字とは言え大分好転したので、そう悲観的になることもないと思う。

 14年度未だ肝心の貿易収支がマイナスではあるが、全般的に好景気を取り戻したのは円安に伴う輸出の好調であり、同時に原油価格が安くなったことが大きい。東日本大震災以降電力エネルギーを火力発電に頼るようになり、その結果原油の輸入量が増え、それが高値だった。安い原油価格体制がいつまで続くか分からないが、その間に収支構造の変革などを通じて安定的な国際収支システムを作り上げることを検討すべきであろう。

 今回の好決算は、思いがけない科目によるところも大きい。その最たるものは、新聞各紙にも取り上げられている「旅行収支」である。

 かつて旅行収支は真っ赤っかだった。実に55年ぶりの黒字だというからすべての旅行業者にとって初体験であろう。つい最近まで貴重な外貨を持ち出す日本人海外旅行者が増える一方で、日本に外貨を落としてくれる外国人旅行者の数が少なかった。それが巷間噂されるように近年外国人観光客が増え続け、かつては100万人単位でしか訪れなかった彼らが、毎年のように増え続け、今では15百万人近い外国人が日本を訪れ、外貨を使ってくれるようになった。これにより14年度旅行収支は前年度5千億円の赤字から、一転して2千億円の黒字となった。この他に日本資本の海外会社の稼ぎで日本に支払われた収益が全般的に大きく貢献している。更にあまり注目されていなかったが、知的財産権使用料が2兆円近い黒字だった。

 旅行業がこれほど持て囃されるようになるとは今昔の感に堪えない。長年旅行業に携わって来て、外国人旅行(インバウンド)用のパッケージツアーまで企画した厳しかった経験から申し述べれば、外国人旅行者が今になって急激に増えているのは、円安効果とか、日本の魅力が見直されたとか、周辺アジア諸国の経済成長とかの好要因はいろいろ考えられる。しかし、観光庁は時々恰も国家の力が大きな力となったような発言をするが、はっきり言えることは旅行業者と観光業者が一体となって、これまで地道に努力してきた努力とその成果が漸く実りつつあるということであり、国の公的機関がやってきたことはほんの僅かであると言いたい。ざっくり言えば、それより海外旅行者が増加していた頃は、わが国の外貨の準備高によって海外旅行者が持ち出す外貨が左右された苦い経験がある。

 まずは海外旅行者の持ち出し外貨枠を上げたり下げたり調整することによって外貨管理体制を厳しく締め付けたのである。当時はまるで海外旅行する人は悪者扱いされているのではないかと国の締め付けを恨んだ時期もあったくらいである。こうした苦労を乗り越えて今漸く観光収入が国家経済に貢献するようになった。これは上記のように旅行業者と観光業者の努力の賜物であると声を大にして言っておきたい。決して国の手柄なんかではない。この点では国の貢献度は大分低い。

2015年5月14日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : mr-kondoh.com