南シナ海が国家間の領有権争いで紛糾しているのは、明らかに中国が南沙(スプラトリー)諸島で国際法上とても許されない無法な岩礁埋め立てと施設建設工事を続けているからである。先般米空軍哨戒機の上空飛行に対して一方的に警告を発信したり、公海上をわがもの顔に埋め立てて軍事施設を作ろうとする行為が、周辺諸国の強い警戒心と不安を駆り立てている。しかし、中国は一貫して工事を続け、公海を自国領土と主張している。世界地図を見れば分かるように、どう考えても南沙諸島はベトナム、マレーシア、フィリピンなどの領土より遥かに中国本土から離れている。にも拘わらず自分たちの領土だと言い張り、他国からの抗議を素直に受け入れようとしない傲慢な姿勢と覇権主義は、これ以上何を言っても無駄なのだろうか。こういう中国の言動が、世界に大きな不安と衝突の危機感を生みだしていると言ってもいいのではないだろうか。中国政府には、もう少し大人の対応をしてもらいたいものである。
昨日閉幕したアジア安全保障会議で、日米豪などが中国に対して硬軟交えた非難を繰り返しているにも拘わらず、中国は自国の一方的な立場を主張して反論するばかりである。会議でアメリカのカーター国防長官が埋め立て工事の即時中止を求めたことに対して、強硬姿勢で切り返している。大国主義が露骨に顕れたのは、アメリカに対して自らの主観に基づく無責任な発言は控えるべきだと言い、驚くべきことにこうも言ったのである。領有権を争うベトナムやフィリピンを批判して「小国は挑発的な行為をとるべきでない」と尊大な発言をしたのである。これでは南沙諸島の領有権争いに解決の見込みが立たない。
傲慢な中国政府に平和と友好の意味を悟らせるのは容易なことではない。かつてはあれほど腰が低く思いやりのあった控えめな中国の人たちが、ここ40年ほどの間にどうしてこうも思い上がるようになり世界中の人たちから嫌われるようなことになってしまったのだろうか。戦後の学校教育のなせるせいだろうが、本当のところはどうしても分からない。そんなに人間の本性って簡単に変わるものだろうか。かつて親しかった親切な中国の人たちを思うと辛いし、寂しい気がしてならない。