またぞろ恐ろしくお粗末な事件が起きた。年金問題で前科のある日本年金機構の情報漏れである。総勢約125万人の個人情報がウィルス侵入により外部へ流出してしまったのである。日本年金機構は約6千万人もの大量の個人情報を握っていながら、どうしてこうも脇があまいのだろうか。この日本年金機構なる組織は2009年に年金不払いが大きな社会問題となって解散した旧厚生省に所属した社会保険庁の後継再生機構である。それにも拘わらず、性懲りもなく別種の大チョンボをやらかしてしまったのだ。
何でも最初は外部からのサイバー攻撃により職員のメールアドレスを流出し、非公開だったメールアドレスにさも関係機関からの情報と思える医療費などの問い合わせがあり、開いた添付資料から結果的に個人情報が漏れてしまったようだ。
偶然ではあるが、第一次安倍政権が崩壊したのは年金不払いが問題になりつつあったころである。更に時の官房長官が塩崎現厚生労働大臣で、菅現官房長官が担当大臣だったらしい。そして、その後安倍政権は崩壊した。何だか象徴的ではないだろうか。
その菅官房長官が今日国会の憲法審査会における参考人の発言に対してふざけたコメントを述べた。こんな軽薄な考えで憲法を考えているとしたらひょっとすると安倍政権の命脈も尽きるのではないかと、つい別の意味で淡い期待を抱いてしまう。
では、菅官房長官はどんなふざけたコメントを述べたのか。今日衆議院憲法審査会で憲法学者である3人の参考人が、それぞれ安保法制、就中集団的自衛権行使について憲法違反であると意見を述べた。3人のうち、特に注目されるのは、自民党推薦の長谷部恭男・早大教授が自民党に逆らうかの如く集団的自衛権行使は憲法違反であると断言したことである。また、かつてはやや保守的と見られていた民主党推薦人の小林節・慶大名誉教授は、集団的自衛権行使は明らかに憲法9条第2項に違反していると主張した。維新の党推薦の笹田栄司・早大教授も違憲であるとはっきり明言した。これに対して、菅官房長官は閣議決定を経ているので憲法解釈上憲法違反には当たらないと自民党の参考人までが憲法違反と述べたことに反論したのである。どうしてこのような論理が生まれるのか。菅官房長官の思考回路が理解できない。この人に政治を託するのは、危険である。
政府見解はあまりにも急いで憲法違反、憲法改正の道を駆け上ろうとしているが故に、それぞれ言うことが継ぎ接ぎだらけになっている。3人の参考人が揃いも揃って憲法違反であると当然の見識を述べていることに対して、これ以上議論上は抗弁できまい。こんな風に強引に憲法を無視し、何が何でも憲法を改正しようというのが「戦争ごっこ」の好きな自民党の最終的な目標なのだろう。