若いうちに単身で海外へ出かければ、想定外のありとあらゆる事象にぶつかり、それを乗り越えることによってどれだけ有為な人間形成が為し得るか計り知れない。これは私自身の「海外武者修行」体験からその後私の信念となり、教育機関で講演の機会があれば、必ずその利点を強調してきた。実際2010年のノーベル化学賞受賞者で高校先輩の根岸英一博士とその翌年に話合った時も、博士から私の持論に大賛成だと力強く賛意を示し励ましていただいた。
その若い時の海外体験を、奈良県生駒市に住む長男家族の孫に味わわせてやりたいと考え、今年4月大学受験に熱心な私立高校に入学したのを機会に、この夏休みの間にアメリカへ行かせて本場の英語に触れさせようと計画を立てている。この孫の男児には2人の妹がいるが、彼女らがスポーツを得意として自由奔放にのびのびと育っているのに引き比べて、長男である孫は優太というその名の通り性格的に優し過ぎるし、引っ込み思案で、スポーツはまったく不得手である。幸い学校の成績は上のレベルにいて英語も得意のようだ。
ところが、息子は塾が忙しいとか、学校のスケジュールがあるとか言いながら、学校と塾を優先させて可愛い子には旅をさせようとの親心があまりない。そこでゴールデンウィークに家族揃って泊まりにやって来た時に、目先の勉強より長い将来を考えて一週間程度の短期間には目をつぶり一皮剥かせるような教育効果として、思い切ってアメリカへ行かせてみてはどうかと説得し、しぶしぶ納得させた。
しかし、その後旅行期間を連絡してこないので、その気持ちも失せてしまったのではないかと気になっていた。孫の旅券申請やビザに代わるESTA取得のための手続きに時間もかかるので、大凡の旅行計画を一方的に伝えてその返事を待っているところである。
孫にとってはこの際殻から脱皮する良いチャンスであり、生の英語に触れ外国の空気に接することは、必ずや彼を逞しく成長させることになると確信している。
取り敢えず、教育研修に効果的な都市として「サンフランシスコ」を考えている。団体旅行ではなので、一般的な市内観光の他に名物のケーブルカーに乗ったり、地下鉄BARTでサンフランシスコ湾海底トンネルをオークランドへ渡って名門カリフォルニア大学バークレー校(U.C.Berkeley)キャンパスを見学したり、世界遺産ヨセミテ渓谷を観光したり、個人でなければ行きにくい経験を積ませてやりたい。連れて行ってやりたい場所は山ほどある。スポーツが好きならMLBのジャイアンツやオークランドの大リーグ観戦が良いのだが、スポーツ嫌いな孫が興味を示すとは思えない。お爺ちゃんが張り切って万事仕切っていたのでは、まるで武者修行にはならないが、今回は孫を何とか家の中から連れだして武者修行とはやや異なるが、異国文化に触れさせることが第一の目的である。思い切ってその気になってくれるだろうか。返事を待っている今も半信半疑である。