先週総選挙が行われたトルコでは、独裁者の道を歩み始めたエルドアン大統領率いる公正発展党(AKP)が予想外に過半数を割り、その一方で少数民族クルド系の人民民主主義党(HDP)が大きく議席を伸ばしたことについて、8日の本ブログ上に拙いコメントを書いた。この総選挙についてはどういうわけだか日本のメディアはあまり報道することはなかった。今日になってやっと朝日が大きなスペースを割いて随想とHDP党首へのインタビュー記事を掲載した。
それら2つの記事では、大統領が紆余曲折の政治家経歴を辿った末に現在強権的な政治主導で自党、並びに政界を牛耳っていることに話が及んでいる。日本とトルコの外交関係は国家、国民のレベルで以前からかなり友好的で、トルコは親日国として普く知られていた。最近俄かに明治23年和歌山県串本沖で遭難したエルトゥールル号で500名以上が亡くなった際、和歌山県の地元民が救助活動をして70名が救助されたことが大きく取り沙汰されるようになったが、この海難事故が全トルコ国民の心情に強くアピールし、トルコ人の親日的感情に拍車をかけていると伝えられている。
強権的なエルドアン大統領は大の日本好きらしく、同年ということもあって同じように国民の意見を聞かなくなった安倍首相と妙にウマが合うようで、首脳会談もすでに3回行っている。
しかし、日本人として気になるのは安倍首相の売り込みで大統領が決めた日本からの原発購入が今トルコの良識派から批判されていることである。「日本が自国で止めた原発をなぜわが国で建設するのか聞きたい」「地震学者が危険性を言っても無視される。なぜこんな地震国が原発を輸入するのか」と至極当然の不満の声が上がり、トップだけで決めた原発購入に非難の声が高まっているのだ。安倍首相の積極外交によって原発の建設が決まったことが、将来の両国の友好関係に水を差すことが心配である。私も1999年のトルコ大地震に現地で遭遇したが、日本と同じように地震国トルコで実際大地震が発生し、仮に福島原発のような放射能漏れが起きたらその責任論が持ち上がることは必至である。
この両首脳のメディアへの介入と圧力も目に余るようだ。テレビで政府批判が出ると、すかさずテレビ局に電話を入れて圧力をかける。安倍政権のメディアへの介入は最近になって露骨になってきた。一方、エルドアン政権のメディアへの介入もこの半年間で一気に暴走しているようだが、どこか安倍政権と符牒を合せているように感じられる。
安倍政権は一強多弱の基盤の上に増長し、わがもの顔になって、専制政治へ走り出したか、さもなければ忍び寄る国民の強い安倍不信によりじわじわっと没落が始まるのだろうか。後者であれば国民にとって幸せこの上ない。