集団的自衛権行使容認について、憲法学者を始めとして多くの有識者から憲法違反であるとの声が高まり、困った政府は何とかそれらの批判をかわそうとして恥も外聞もなく姑息な手段を考え出した。
その一貫として昨日も衆議院特別委員会では参考人を呼んで質疑を行ったが、その結果も思わしくなかったのである。その参考人の中に、元内閣法制局長官の阪田雅裕氏と同じ元長官・宮崎礼壹氏がいた。阪田氏は政府が集団的自衛権の行使容認の根拠とする1972年の政府見解「集団的自衛権の行使は憲法上許されない」を勝手に変えて、行使容認をしたことを「憲法を順守すべき政府自ら憲法の縛りを緩くするように解釈を変えるということである」と問題視した。更に宮崎氏は「憲法9条の下で認められないことは、わが国で確立した憲法解釈で、政府自身がこれを覆すのは法的安定性を自ら破壊するものであり、法案は憲法9条に違反し、撤回すべきだ」と厳しく批判した。
にも拘わらず、昨日国会は安保法案を審議し確実に成立させるため、会期を95日間延長することを決めた。安倍首相の頭の中には、悪いことであっても、仮にそれが憲法違反であろうとも、総理大臣である自分がやれば許されることだととんでもない妄想に囚われている節がある。「徹底的に議論し決める時には決める。この議会制民主主義の王道を進んでいくべきだと判断した」と言いきっている。議会制民主主義の何たるかを理解できないご仁が何を寝言みたいなことを言っているのかチャンチャラおかしい。いよいよ付ける薬が無くなってきた。
それら一連の後遺症の影響であろうか、今朝の朝日アンケート調査によれば、安倍内閣の支持率は急速に大きく下がり、その一方で不支持率が上がった。支持率は先月に比べて6%も下がっている。過去一度あった安倍政権の最低支持率と並ぶ39%というから見捨てられかけている。特に戦争に嫌悪感を抱いている女性票は、8%も支持率が下がったことから考えれば、「俺のやることはすべて正しい」と信じ込んでいるお坊ちゃん総理には、周囲がまったく見えなくなっているようだ。いつか自分の間違いに遅まきながら気がついた時には、周りには誰もいないという事態になっているのではないだろうか。
時折しも今日は沖縄「慰霊の日」である。昭和20年4月1日にアメリカ軍が上陸し、今日6月23日を以って全住民1/4の犠牲の上にさしもの沖縄地上戦は終了した。
糸満市摩文仁の平和祈念公園では沖縄全戦没者追悼式が行われ、安倍首相を始め衆参両院議長、ケネディ駐日アメリカ大使らが出席した。毎年決まりきって沖縄県が辺野古移転計画中止を求め、一方で政府が沖縄県民の負担軽減を言いながら、これこそが基地問題解決のための唯一の方法と言い、お互いの言い分は一向に噛み合わない。首相の安保法制に関する考えが余りにも頑ななで思いやりがないために、「帰れコール」の中で行われたステートメントもまるで説得力がない。