2975.2015年7月6日(月) ギリシャ、国民投票でEUの提案を拒否

 昨夜半日本にとって少しばかり気になるニュースがあった。ドイツのボンで開かれていたユネスコの世界遺産委員会で、日本が申請していた「明治日本の産業革命遺産」が登録直前で韓国のアピールにより、登録が申請通り認められるかどうか危うい状態にあった。最終的にいくつか説明を加筆したり、その主旨が充分周知されるよう啓蒙のための施設を新設することなどをして調整し大筋認められることになった。しかし、登録が一日延期されたことにより、それらの遺産の所在地では慶祝の気分も今一つ盛り上がらないようだ。当初から日本の登録申請に対して、韓国側はいくつかの産業遺産は植民地時代に朝鮮半島から強制徴用された労働者が、厳しい労働を耐え忍んだからこそ工場は稼働できたことを解説書に盛ることを要望していた。

 先月の日韓外相会議でそのハードルはクリアされたと思っていたところ、両国が詰めの話し合いで最終合意に至っていなかったようである。ここまでこじれると、そうまでして果たして世界遺産として登録することが望ましいのかどうか疑問さえ感じる。あまり後味の良くない今年の世界遺産登録の経緯である。

 もうひとつ日本経済にとっても大きな問題は、昨日ギリシャで行われた国民投票の結果の行方である。今年2月の就任直後からチプラス・ギリシャ首相の言動は揺れ動いていて、EU側とギリシャ国内の世論を手玉に取っているように感じている。ギリシャのIMFからの借金返済について、EUの財政緊縮要請に対して自らは決断せずに、国民にその判断を委ねたことも無責任のそしりを免れない。それでいながらEUに対してEUの緊縮策を受け入れる用意があるとEUの様子を窺いながら、国民にはEUの緊縮策には反対するよう呼びかけたことなど、その二律背反的言動は一国のリーダーとしては些か不可解である。チプラス首相はギリシャ国民の支持を背景に、EUとの条件闘争に乗り出すのではないかとの詮索もある。EUの首脳陣の中には、これ以上ギリシャを信用できないという人もいる。EUの蔵相会議ではチプラス首相、並びにギリシャ国民に対する不満と不信がわだかまっている。

 そして国民投票の結果は、緊縮反対派61.31%に対して、賛成派は38.69%で民意は圧倒的に反対派が勝利した。チプラス首相は有権者が勇気ある選択をしたと評価し、改めてEUと交渉することを述べているが、EUにとっては思惑が外れ、例えギリシャが仕切り直しを言い出したところで、自分たちの都合だけを主張するギリシャの申し出をそう簡単には受け入れられないだろう。こうなるといよいよデフォルトの可能性も出てきた。ギリシャがEU圏から離脱するのではないかとの心配の声も聞かれ、世界中にギリシャ経済の不安感が覆いかぶさろうとしている。日経平均株価は今日だけで427円も下がった。

 アテネ市内では銀行機能が半死状態でこの不便な経済活動に市民がいつまで我慢できるのだろうか。チプラス首相の手腕が改めて問われると同時に、EUの緊縮要請を突き返したギリシャ国民の我慢はいつまで耐えられるだろうか。しばらく目が離せない。

2015年7月6日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : mr-kondoh.com