大手電機メーカー・東芝の不適切会計が新聞種になって久しい。日本のトップ企業のひとつ、東芝の粉飾決算スキャンダルが今朝の日経紙でもトップ記事として採り上げられている。
東芝に務めていた友人もいるが、東芝は長年ラグビーにも積極的に支援している優良企業である。その名門企業がどうして何年にも亘って不正行為を行うことになったのか、近々証券取引等監視委員会の調査が入る。下手をすると東証から上場廃止により特設注意市場指定へ移される可能性がある。
そもそも東芝に芳しからぬ噂があると知ったのは、先月発行された「選択」6月号に4頁に亘って批判的な記事「企業研究シリーズ―東芝―社内抗争が生んだ『粉飾会計』の闇」が掲載されていたからである。そして、今月に入り4日に日経紙と朝日にもトップ記事扱いで1500億円にも上る不適切会計について報道された。以降8日から連日トップ記事扱いで今朝の各紙にも書かれている有様である。
かつて大手企業では旧鐘紡が不祥事を起こして市場から総スカンを食ったが、近年特設注意銘柄に指定されたのは、決算訂正で赤字に陥ったIHIと財テクの失敗を隠蔽したオリンパスぐらいである。天下の東芝はこの緊急事態を創立以来の危機と感じて、上場廃止だけは免れたいとばかり神妙に反省の態度を示しているようだが、東芝の場合は不適切会計と同時に、社内でも公になっているトップ同士の対立抗争が問題をさらにのっぴきならぬものにしているようでもある。
営業的には、大金を投じたアメリカのウェスチングハウス社買収により原発事業を軌道に乗せ、経営の大きな柱とすることができたが、東電福島原発事故以来原発事業を頼りにすることができなくなったことが経営を大きく圧迫した。加えてかつて花形だった半導体事業も下り坂へ向かったことが不振に輪をかけた。そこへ順調満帆だった経営が赤字に転じた時点で、責任問題から西田厚聰元会長と社長だった佐々木則夫副会長のトップ同士が見苦しい対立劇を演じて外部から不評を買い、社内的にも「物言えば唇寒し」の空気が支配したようだ。
粉飾決算を重ねて生じた負債処理のために、東芝は資産売却などを検討し、主力銀行に融資枠を打診している。今月21日に第三者委員会が調査結果を発表するのに伴い、不適切な経理を行っていた当時の社長である佐々木副会長と、赤字決算に対して部下に「工夫をしろ」と檄を飛ばした田中久雄現社長の辞任は免れないと見られている。
東芝には、土光敏夫氏を始め、経団連会長を務めた名士らが数多くいるが、現相談役の西田元社長・元会長も虎視眈々と経団連会長の座を狙っていたと言われ、それが社内の空気に微妙に影響したと見られている。それにしても外へ向かって営業すべき業態にも拘わらず、会見の場で社内のトップ同士が醜いいがみ合いを晒すなど、成るべくして成ったというのが今日の東芝であろう。名門東芝にしてこの体たらくである。ここには多くの教訓が含まれていると思う。