2992.2015年7月23日(木) 埼玉県知事の騙し打ち、公約裏切り

 来月行われる埼玉県知事選挙が今日告示された。現職と新人併せて5人が立候補したが、今回特に注目されるのは、現職の上田清司氏が4度目の名乗りを挙げたことである。そこにはどうしても納得の行かない理由があるからである。かつて上田氏は長期に亘って権力のある地位に留まることの弊害を訴え、自らが言い出しっぺになって「多選自粛条例」を制定し、4度目の立候補をしないことを県民に約束した。現職知事が条例を制定したことは極めて重いものであると誰もが理解している。それが上田氏の本心にどういう気持ちの変化があったのか、現職知事の立場の欲得で目が眩んだのか、それをいとも容易く反故にして4選目の知事選に打って出ると言い出した。羞恥心はさらさらなく県民に堂々と嘘をつき、県民を騙し打ちにしたのである。恥ずかしくないのかと聞いてみたい。上田氏が民主党代議士から埼玉県知事に鞍替えした時は、自民党の支援も受けていた。だが、流石に自民党は約束反故の民主党系上田氏の立候補に呆れ、かつ自党の息がかかった候補者を当選させたい自民党は、「自ら定めた『多選自粛条例』を破ることは絶対にいけない。正さなくてはならないという使命感から立候補した」という消防庁出身の塚田桂祐氏を推薦した。

 では、当の上田氏は朝令暮改、約束違反、裏切りについてどう思い、どのように語っているのか。「3期12年で辞めるという信念を曲げることになったのは不徳のいたすところですが、政治は『公』のものであり、私情を捨ててがんばっていきたい」と約束違反をあっさり不徳の至りと片付け、自らの理念と信念を翻したことに些かの反省もなく、公の政治家を装っているが、最も政治家に相応しくない欺瞞のコメントを述べているのだ。こういう厚顔な抗弁を繰り返して県民が許してくれると思っているのだろうか。自ら作った条例を自らの都合で破るとは、まともな政治家にはとても真似のできない恐れ入った芸当である。こういう嘘つきには金輪際知事をやって欲しくないと県民誰しもが考えるということに考えが及ばないようでは救いようがない。衆議院議員時代には民主党内でもある程度存在感があったが、もう埼玉県民は誰も相手にしないだろう。

 さて、同じ上田氏でも、ラグビー界でかつて一世を風靡しながら、国が指定する難病「アミロイドーシス」により今朝62歳で冥界へ旅立たれた上田昭夫氏にはつい同情の念を憶える。こちらの上田氏は嘘つき知事とは異なり、慶大ラグビー部監督として母校慶應を1985年度日本ラグビー界の頂点に引き上げた名監督として知られた。その後ニュース・キャスターとしてテレビでも活躍した。率直に言ってあの優勝は嬉しく久しぶりに興奮した。3年前私が編集委員長となって大学ゼミ恩師の追悼文集をまとめたが、その文集にもこっそり優勝の写真を1枚載せたほどである。

 あの時代は度々秩父宮ラグビー場に足を運んだり、ラグビーの実況中継に夢中になっていたが、上田監督に因んで微笑ましく印象に残っているエピソードがある。それは、社会人の王者・トヨタ自動車を破りラグビー日本一になった直後のコメントで、上田監督が「選手たちを誉めてあげたい」と語ったことに対して、当時ゴルフをやわなスポーツと蔑視して、激しく男らしいスポーツとしてラグビーに熱中していた作家・野坂昭如氏が「選手たちを誉めてあげたいなんて言い方は間違いだ。誉めてやりたいが正しい」と皮肉っぽく述べていたことが忘れられない。

 上田昭夫氏のご冥福を心よりお祈りしたい。

2015年7月23日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : mr-kondoh.com