3661.2017年5月22日(月) トランプ大統領のアラブ行脚

 昨日弾道ミサイルを発射して、また国際社会に過激な緊張状態を強いた北朝鮮の周辺では大分苛立ちが目立っている。中でも日本にとって衝撃的なのは、ウォール・ストリート・ジャーナル紙ジェラルド・ベーカー編集局長が、北朝鮮が開発中の大陸間弾道弾(ICBM)を保有するようになれば、日米同盟の力が弱まると語ったことである。それは、ICBMの射程内に入るサンフランシスコが核兵器で壊滅させられるかもしれないのに、アメリカが自国防衛を放置して日本や韓国を防衛する見込みはないので、日米同盟の力は弱まるということを指摘しているのだ。結局これまで米軍が極東海域を中心に広く軍事力を展開していられたのは、アメリカ本土が同地域から離れていて敵国の攻撃が及ばず安全だと認識していたからである。それが自らの尻に火がつくようになれば、まず自国を防衛しなければならず、他国の防衛どころではないという本音である。

 かつての第1次、第2次世界大戦のように旧式の戦法、戦略で戦うならともかく、今では飛び道具、しかも最新の技術を駆使した精密なミサイルのような兵器を使用するようになれば、北朝鮮のように国民を巻き添えに国家破滅を覚悟してでも世界中で受け入れられない身勝手な自己主張をアピールしようという、愚かな国家が現出した以上共倒れのような事態を招来する可能性が見えた。実に恐ろしく陰険な時代になったものである。

 さて、トランプ大統領は昨日から初の外遊先としてサウジアラビアを訪れているが、一部のアメリカ・メディアはこれをロシア疑惑から逃れるための逃避行と批判的に取り上げている。かつて、ウォーターゲート事件で孤立無援の中を同じようにサウジアラビアを訪問したニクソン元大統領のケースに例えているのである。

 今年1月大統領就任早々アラブ諸国からの入国者を制限していながら、アラブの50ヶ国もの首脳を集めて、対ISのために結束を強めるようスピーチしたようだが、この身勝手さは二枚舌外交も極まれりではないか。

 それにしても、日に日に反トランプ・ムードは高まり、就任時に46%だった支持率が、今では38%まで下がり、逆に不支持率は1月には44%だったが、現在では56%にまで跳ね上がってしまった。モロー特別検察官任命を機に、トランプ大統領に対する弾劾の動きも見えて来た。

 大統領はこれからイスラエルに向かうようだが、ロシアへの機密情報疑惑がクローズアップされている折、漏らしたとされる情報はイスラエルから得たものである。大統領選中、自らが大統領に選任されたら、アメリカ大使館を現在のテルアビブからエルサレムへ移転すると公言していた。トランプ大統領の弱みを握ったネタニエフ首相は、これらの点を考えたのかどうか、イスラエルの首都はエルサレムだとトランプ氏入国前に早々とアドバルーンを上げ、トランプ氏がイスラエルのご機嫌を伺う発言をすることを期待しているように思える。

 エルサレムは隣国ヨルダンや、パレスチナ自治区との境界線の問題が絡んで、首都は国際的にはテルアビブとされている。エルサレム東半分を占領されて奪われたヨルダンなどが認めていないからだ。それを軽薄で無分別なトランプ氏の放言を逆手に取って、首都として認めさせようというのは、ネタニエフ流儀なのだろうか。それに応えれば、迂闊なトランプ氏の罪滅ぼしでもある。イスラエル国民を前にして、トランプ大統領はエルサレムをイスラエルの首都であると言い切ることが出来るだろうか。

2017年5月22日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : mr-kondoh.com