金正男殺害事件をきっかけに北朝鮮とマレーシアの外交問題にさざ波が立っている中で、韓国取材班のわが物顔の行動がマレーシア取材班らの間で批判を浴びている。北の行動を意識して多くの取材陣を送っている韓国は、北と言葉が通じ合うこともあり、マレーシアの北朝鮮大使館前で優位に北朝鮮に取材しようとの願望からか、傲慢な言動が他国の取材陣から反発を買い、現場は穏やかならぬ空気が流れているようだ。
昨日カン・チョル駐マレーシア大使が国外追放処分でマレーシアを離れたが、この措置に対する嫌がらせだろうか、北朝鮮は同国内にいるすべてのマレーシア人の出国を禁止してしまった。するとすぐさまマレーシア政府も北朝鮮人のマレーシア出国を認めないと対抗措置を取った。これによって、両国の対立が益々エスカレートし、いずれ近いうちに国交断絶という最悪の事態に追い込まれてしまうのではないだろうか。
韓国内では北朝鮮への対抗上マレーシアにおける金正男暗殺事件報道に力を入れて報道し、大きな話題になっているようだ。ところが、国内の政治は八方塞がりの状況で、昨年12月に朴槿恵大統領が国会で弾劾訴追され職務停止となり、大統領不在の状況下にあり、政治は完全に機能不全に陥っている。
そして、昨日朴槿恵大統領の疑惑事件に関する特別検事の捜査報告書が発表された。そこにはいくつかの疑点があるようだが、特に①韓国最大財閥サムソン・グループから43億円の賄賂を受領したとされ、すでにサムソンの経営者が逮捕されていることが目立っている。更に②拘留中の崔順実容疑者とともに29億円を受け取ったとされる収賄容疑もある。憲法裁判所が近く決定する判断によっては史上初めて大統領職を罷免される可能性が高い。もちろん大統領自身は訴追理由を全面的に否認しているが、最終結論は大統領にとって厳しいものになりそうだ。韓国が内外に気持ちの休まらない難題を抱えていることはまぎれもない事実である。
それにしても朴槿恵大統領がこのように金塗れ体質であるとは思いも寄らなかった。というのは、2009年に韓国を訪れた時、ガイドが歴代大統領の中で最も国民から慕われ尊敬されているのは、意外にも軍人だった朴槿恵大統領の父・朴正煕元大統領だと聞いたからである。その理由として父親は軍人らしく清廉潔癖でいつも毅然としてお金にまったく執着せず、むしろ私費から慈善団体へ寄付をしていたため、暗殺された時はほとんど手元に資産が残っていなかったほど金銭にはきれいな人だったと聞かされたからである。その父親を傍で間近に見ていた娘が、こともあろうに父親が嫌悪していたあぶく銭に手を出し、史上初めて現職大統領として弾劾訴追され失職する危機に追い込まれている。暗殺された父も、流れ弾に当たって亡くなった母もさぞや泉下で悲しんでいることであろう。
尤も最近のわが安倍晋三首相の怪しげな国有財産絡みの噂も、国民としては情けないと思うし、恥ずかしくも思う。