中国の国防費が初めて1兆元(16兆5千億円)を突破した。これに勢いを得て中国は今後益々軍事国家への道をひた走りに走るであろう。因みにわが国の防衛予算は約5.1兆円、アメリカの国防予算は約68兆円である。中国の国防予算が増加する背景には、南シナ海や尖閣諸島周辺の領海問題があり、海軍関係費が大きく増えている事情がある。南シナ海へ進出する中国海軍に対して東アジア諸国の警備能力は充分でなく、それらの国々からの支援要請に応えて日本は、開発途上国援助(ODA)で軍事的用途や国際紛争への恐れのある援助が禁じられている中で、軍隊に対してではなく海上警備という名目で巡視船を供与する苦肉の策である。
中国の国防費の伸びはこのところ目覚ましく、2年連続で1桁の伸び率ではあるが、その他の年度はほぼ2桁台の伸びを示して、総額では20年前に比べて国防費は12倍以上に増額された。その背景には東アジア海域の自国の権益確保と拡大以外に、対アメリカ戦略があると考えられている。中国を遥かに上回る国防予算を抱えるアメリカで、トランプ大統領が先日の議会演説で10%の国防費増額を要請したことは、中国の負けず嫌いに火をつけ、対抗上来年度には更なる増額を行うようになるだろう。いずれにせよ現状では、中国は力の弱い東アジア諸国に圧力をかけながら無法に海域拡大を行って覇権を拡大しようとしている。
将来米中間で戦火を交える可能性があるとは言えないが、現状では中国はアメリカの後塵を拝していることは間違いない。東アジア沿岸国との間で度々トラブルを引き起こしつつ、中国が我儘にも自国の存在感を強化しようというのは困ったことである。
その中国で5年に1度の全国人民代表大会(全人代)が今日から始まり、15日まで11間開催される。5年前に国家主席の座に就いた習近平主席はこの間自らの立場を固めることに意を注ぎ、かなり狙い通りの目的を達した。益々反対派を締め付け、体制固めに専心するであろう。
いずれにしても、アメリカは軍事費を増額し、中国もまた年々予算を増やしているので、今後お互いに軍事費拡大競争が始まり、ちょっとしたボタンの掛け違いで衝突しなければ好い。
他方、わが国の防衛費も増えるばかりである。2009年予算で防衛費割合が予算総額の1%の壁を突破してから増える一方である。そこへ今では政府・自民党は憲法改正を検討している。何だか行き先が暗くなるような気がして心配である。