2017年の経済活動もスタートした。1年で最初の株式取引となる大発会の今日、日経平均株価は昨年末より479.79円も上がり、19,594.16円となった。これで政府、財務省、日銀、財界関係者はホッとしていることだろう。このまま本年末までこの好調を保てるかどうか、国内のみならず海外の政治、景気にも左右されるので何とも言えない。ニューヨーク株式市場も僅かながら上がっているので、今後トランプ氏が大統領に就任して不測の事態により株価が下がるような事態さえなければ、この調子を維持できると言えるのだろう。
イギリス人歴史学者ポール・ケネディ氏が、「選択」1月号の中でインタビューに応じている。氏は「アメリカにはトランプ氏を含めて『反知性主義』がはびこっているが、無知からくる自信過剰はつまずく。公約が実現出来なければ有権者は失望し、軌道修正を図られる。今は反動期でやがて揺り返しが来る。各国の利害が絡み合った時代に、アメリカが一方的に世界から撤退するのは難しい。トランプ氏の関心が内政にあることは諸外国にとって必ずしも悪いことではないが、トランプ氏の最優先課題が日本経済だったら、予測不可能なトランプ氏に振り回されるだろう」と語っている。
そのトランプ氏は早くもアメリカ第一主義の間接的な実施により隣国メキシコに影響を与えている。メキシコに工場移転を考えていたGM社にメキシコ製車に対しては35%の高関税を課すと語り、それと同じようにフォード社もメキシコにおける工場新設計画を取り止めると発表した。早くも産業界が剛腕・トランプ氏に屈服した感がある。早速これに反応してメキシコのペソが急落し、対ドル外為相場は市場最安相場にまで落ちた。
この背景には雇用問題もさることながら、トランプ氏にとっては許しがたい、アメリカ国内に直接利益をもたらさない外国への投資額の増加がある。30年前には世界経済で中国が占めるシェアは5%に過ぎなかったが、今では20%近くに達している。その一方で、アメリカは逆にその当時30%のシェアが今日では20%に落ち込んでいる背景がある。そのトレンドにトランプ氏がアメリカ・ファーストを訴えている根拠がある。
いずれにせよ2週間後にアメリカ大統領に就任するドナルド・トランプ氏が、本当にアメリカだけの景気回復、世界1の地位の確保に拘るのだろうか、世界中の関心を呼ぶことになる。日本もケネディ氏が心配するように、トランプ氏の思い付き発想にかどわかされるようであっては困る。その意味では日本ももう少ししたたかな外交力を発揮しないと、トランプ氏に自家薬籠中のものにされてしまう心配がある。