今日都内に木枯らし第1号が吹いた。アメリカにもドえらい木枯らしがやって来た。大統領選挙で大番狂わせが起きた。大方の予想を覆して過激な発言でとかくの物議を醸していた不動産王ドナルド・トランプ氏が勝ったのである。どこのテレビ局も朝から関連の番組を放送しっ放しで、新聞も号外が出る有様である。
今日開票されたアメリカ大統領選挙の結果は、アメリカの、世界の、また日本の行く先にも厳しい覚悟を予測させる前兆である。共和党候補者ドナルド・トランプ氏が民主党候補者のヒラリー・クリントン元国務長官を僅差で破り、次のアメリカ大統領に決まったのである。アメリカ大統領史上70歳という最高齢で、これまで政治経験はなく、公職に就いたことも軍人になったこともない初めての大統領だという。
投票前メディアの予想では、終始僅差ながらクリントン氏がリードしていた。それがとんだどんでん返しとなった。トランプ勝利にはアメリカ人の中にもアメリカ人の気持ちが分からないと言っている人がいるくらい想定外だった。日本でも唖然としている人が多いが、日経平均株価が大きく値下げして対前日比919円の下落で、一時1,000円超の値下がりとなった。いかに前途が不安視されているかの証明でもある。
接戦になるとは言われて来たが、私もまさかトランプ氏が勝利するとは思ってもみなかった。昨年夏以来始まった予備選を含めてトランプ氏は泡沫候補と見られ、いずれ退くだろうと見られていた。だが、彼はしぶとかった。今度の本選でも、メディアの予想では接戦でクリントン氏がリードしていると伝えられていたが、予想を覆してトランプ氏が勝った。途中の開票情報でも一時クリントン氏がリードする場面もあったが、勝敗を決する州と見られていたオハイオ州とフロリダ州の両州をトランプ氏が抑えたことが勝ちにつながったようだ。
問題は、アメリカ第一主義で、保護主義者で内向き志向のトランプ氏が、これまで諸外国に対して悪口を言い続けて、果たして各国首脳とまともに外交問題を話し合えるのかという懸念である。トランプ外交とトランプ経済はアメリカと世界にとってプラスになるのか。国際的には多くの場面で対立することが増えるようになると思われる。暴言を吐くことを意に介さず、人を傷つけることを厭わない人に、誰が心から信頼しようという気持ちが生まれるだろうか。
一番理解できない点は、彼の外国人、イスラム教徒、移民排斥思想である。そもそもアメリカは移民によって建国され、発展して来た国ではなかったのか。現夫人もスロバキア出身というが、どうして隣国メキシコとの国境に壁などを建設しようという発想が生まれるのだろうか。ベルリンの壁、イスラエルのヨルダン川西岸の壁など、壁は人の気持ちを分かち平和から遠ざけるものだということが分からないのだろうか。
せっかく国民皆保険制度に手をつけたオバマ・ケアを財政的に過重負担だとして廃止することを考えているようだが、それでは低所得層から医療サービスの機会を奪うということになる。選挙で低所得層にアピールしてきた人の言い分としては矛盾するのではないか。また、3日前の本ブログに書いたように、連邦法人税の大幅減税と所得税減税について声を大にしてPRしているが、連邦財政は累積赤字が溜まる一方で、果たして公約は財政的に可能なのだろうか。支離滅裂な点が妙に気になる。
それより何より、諸外国との交渉をきちんとやってもらいたいものである。アメリカではともかく、世界中の嫌われ魔王として、どれほど平和裏に外交交渉をやってくれるのか。
日本にとっても手強い相手ではあるが、感情論に流されず真面目に交渉に当たってもらいたいものである。米軍駐留費用を全額日本に負担させるなんてふざけた話はもう止めてもらいたい。アメリカは戦後まもなく占領国として日本を意のままに支配しつつ都合好く軍事基地を占有し自国の世界戦略・東アジア戦略に利用しながら、今になって財政的に苦しいからと基地負担経費を全額支払えというのはあまりにも身勝手ではないか。これから4年間この我儘大将には悩まされることになりそうだ。