143.2007年10月4日(木) 帝国主義国家・中国の拡大路線

 今年度の読売・吉野作造賞は、山本吉宣・青山学院大教授著「『帝国』の国際政治学」に授与された。いまグローバル化が進んだ世界で、「帝国」論が再び注目されている。著者はこの著書の中で、他国に及ぼす圧倒的な影響力が内政までかかわる場合を『帝国』と定義し、外交のみの『覇権』と区別していると朝日新聞・藤生京子記者は分析している。

 翻ってわれわれの学生時代には、目覚めた中華人民共和国は「中共」と呼ばれ、国民は毛沢東主義の旗の下に、ひたすら社会主義革命完全成就、帝国主義打倒のため前進あるのみとのスローガンを掲げ、アメリカ帝国主義は日中共同の敵と広言し、当時威勢の良かった日本社会党や共産党と組んで、過激なデモやプロパガンダを行っていた。

 その中国はいまどうだろう? ソ連のように社会主義体制が崩壊したのではなく、共産党が背後で操りながら毛思想を継承しつつ、徐々に資本主義的要素を採り入れ、行政府と党を並立させながら二頭制によって帝国主義国家体制を維持している。

 では、あれほどまでに毛嫌いしていた「資本主義」や「帝国主義」については、どういうスタンスで対応しているかというと、それがいまや中国自体が、帝国主義の甘い汁に毒され、資源豊富なアフリカやアジアへ進出し、資本主義の原理の赴くままに帝国主義的版図を拡大させているのだ。地下に眠る毛沢東は、この後裔たちの変革と所業をどう見ているだろうか。

 ビルマで殺害されたジャーナリスト、長井健司さんの遺体が今日帰還した。日本政府もビルマへの経済支援を削減すると公表した。ビルマ軍政の強圧的な統治には怒りを覚えるが、背後で糸を引いているのは、変身した帝国主義国家・中国であることは間違いない。

2007年10月4日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : mr-kondoh.com