「知的生産の技術研究会」総会が例年通り東中野のテラハウスで開かれた。2007年度決算、2008年度予算、事業計画の説明があり、承認された。
意見具申、提案、ご意見拝聴の時間をとってくれたので、久恒啓一理事長に対して、JN協会立教支部をひとつの参考例として話し、多摩大学内にも学生支部設立を考えてみてはいかがでしょうとお尋ねしてみたところ、そういうお考えがあるとのお応えだったので安堵した。久恒理事長がせっかく多摩大学教授へ就任される機会でもあるので、多摩大学支部設立はグッドタイミングだと思う。学生にも積極的に会員になってもらい、知研に若いエネルギーを注入して活性化してもらえれば、知研のみならず、学生たちにとっても従来とは別の面で飛躍の可能性が出てくると思う。相互相乗効果を大いに期待したいと願う。
今日何よりの収穫は社会学者・加藤秀俊先生の基調講演だった。今西錦司、梅棹忠夫、川喜多二郎先生らに連なる京都学派俊秀のお一人である。4年前の講演に続き、密かに期待していたが、「知的生産と知的道楽」と題して、ご体験から滋味溢れるお話を約50分に亘って楽しく伺った。先生はそもそも「知的生産」という言葉自体に、少々違和感を抱いておられるそうだ。消費の伴う瑕疵性のある物的生産なら理解出来るが、非物的生産である知的生産は原価計算の根拠もなく、価値が成り立たないと言われた。確かにその通りで、著作活動とか学者のようなものも知的道楽だと仰った。さらに、他人のためにやるのは職業で、自分のためにやるのは道楽である。漱石の「私の個人主義」を参考にされ、漱石のユニークな論を披瀝された。
京大式カードについては、知識を共有するための工夫であるとは初めて伺った。
一番感銘を受けたのは、人間臭い1次情報を大事にする習慣を身につけることが大切だとのお話である。今日日本には、2次情報、3次情報が溢れすぎていると懸念しておられた。現場で直接見て感じた情報が最も大切であるとのお説は、私自身臨場感の大切さをいろいろな機会に講義しているので、先生のお話に納得しつつ心強く感じた。序に僭越ではあったが、60年安保闘争体験から最近のチベット旅行体験まで質問も交えてじっくりお話させていただいた。その後の食事会でも隣席で親しくお話させていただき、チベット、ビルマ、シカゴ、最近のパキスタン情勢についても話題が広がり愉快なひとときを過ごすことが出来た。小中陽太郎先生とも親しいとも伺った。八木会長から世田谷区野沢の加藤先生と世田谷区等々力におられる小中先生、私も世田谷区深沢に住んでいるので、近くにお住まいのご縁もあり、自由が丘辺りでお2人の先生から一緒にお話をお聞きする機会を設けようとのご提案をいただいた。。
名刺を交換した人も多彩で、皆さん前向きな方々でそれぞれ尊敬出来る人たちばかりである。中でも市民満足学会事務局長・大島章嘉氏からいただいた「官民の大組織への信頼度など評価はどうなっているか?」と題した調査報告書はあまり眼にしたことのないユニークで、内容的にもよく調べられた資料だと感じた。一般的にそうだろうと予想していた業種の満足度が数値で裏づけされ、かなり参考になる資料である。
「今日は昨日より物知りになった」有意義で愉快な一日だった。