356.2008年5月4日(日) 長編時代小説「大菩薩峠」を観る。

 大分前から観たいと思っていた、中里介山の映画「大菩薩峠」を観た。先日NHKで放映された番組を録画しておいたものである。私が初めて海外へ出かけた、昭和41年に製作された岡本喜八監督作品だからかなり古い。三船敏郎、西村晃のように、すでに故人になった有名俳優が大勢出演していて、主役の仲代達矢や加山雄三もまだ若い。「大菩薩峠」は、中里介山が世界最長を目指して書いた長編小説で、大正2年から昭和16年まで、約30年に亘って複数の新聞に連載した41巻の未完の大作で、作者が亡くなって連載は終わった。長すぎて中々読む機会がなく、せめて映画でも観てみようと思っていた。どうも同じように考える人が多かったと見え、戦前から度々映画化され、名優大河内伝次郎や、片岡知恵蔵らも主役として出演している。大菩薩峠という名に憧れ、実際に登ったことがある。あまり登山向きの山というイメージではなく、むしろハイキングに向いた、登りやすい山という印象だった。しかし、目前に雪を冠した南アルプスの峰々が素晴らしいランドスケープを見せてくれたことが強く印象に残っている。

 長編小説なので、映画ではストーリー全編を取り入れるのは難しいとは思っていたが、やはり相当割愛されている。この映画では話の筋をどう決着をつけようとしたのか、中途半端な印象がぬぐえない。主人公の机竜之介が新撰組の宴会で狂ったように暴れまわったまま終わったラストシーンはどうにも納得できなかった。課題が後へ持ち越されたようなエンディングである。原本では、まだ脇役が入れ替わってストーリーは続く。しかもつけ狙っていた宇津木兵馬が近くで待機しているし、始まったばかりの兵馬とお松のラブストーリーの結末はこの先どうなるのか。映画のシナリオがどうも腰砕けのような気がしてならない。実際、竜之介と兵馬の決闘、とストーリーの結末はどうなるのだと聞きたい気持ちである。主人公竜之介は生き残って極悪非道の殺人を犯し続け、ついには故郷近くで夜毎に辻斬りとして現れる。その辺りは映画ではまったく触れていない。やはり30年近くも世間に話題を提供しながら、連載された小説では、スケールが大きすぎて映画のスクリーンには納まり切れなかったのだろう。

 最近は映画もまったく観なくなってしまったが、先日来話題の「靖国YASUKUNI」も昨日から厳重警戒の下で一般に公開されている。この「靖国YASUKUNI」も機会があれば、是非とも観てみたいと思っている。

2008年5月4日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : mr-kondoh.com