岩手・宮城内陸地震が発生して1週間が経った。現在までに死者12名、行方不明者10名の惨禍を残している。東北地方山間部を襲い、山は崩れ、道路は寸断され、川は形を変え、地形が変わってしまった。いろいろな損害も発生している。過去の地震とは少し趣きの異なるタイプの地震だった。いまも行方不明者の救出に自衛隊や警察、消防が懸命の努力を傾注している。生憎梅雨期で降雨が予想されるため、川を堰き止めて出来上がった堰止湖が溢れる恐れありと水抜きを始めた。
いまやあの四川省大地震も日本国内では影が薄くなった。マス・メディアから現地の報告がほとんどなくなった。それどころではなくなったというのが、本音であろう。
ところが北京オリンピックの聖火リレーは規模を縮小して細々と行われている。オリンピック開会式まで50日を切った。今日は、あのラサ(チベット省都)でチベット族と漢民族からほぼ同数の人手を使って聖火リレーを行った。中国政府も大分気を遣っているのだろうか。
中国国内では再びオリンピック・ムードが高まっているようだが、日本国内の水泳のパンツ騒動ほど馬鹿馬鹿しい話はない。確かに結果的に英国スピード社製パンツをはいた選手は記録を伸ばし、優勝している。だが、このパンツ騒ぎは少しおかしくはないだろうか。選手よりもパンツが主役になっている。本末転倒である。確かにスピード社製のパンツには霊験新たかの一面はあるかも知れないが、報道はまるでパンツが泳いでいるような印象を受ける。いくら用具が良くてもそれを使うのはあくまで人間であり、選手である。北島選手はパンツをスピード社製に代えた途端世界記録を更新したが、その北島選手ですら腑に落ちないように「泳いでいるのはわれわれ選手」と子気味良く、パンツ騒動にうつつを抜かしているマス・メディアに皮肉なコメントを残している。
大体近頃のマス・メディアの報道は少々無神経で、ピントもずれている。昨日付朝日夕刊の‘素粒子’は、このところ死刑執行のペースが上がったことを捉え、鳩山邦夫法相を‘死に神’と皮肉り、粛々と職務を実行していると述べていた法相を怒らせた。さすがに朝日へ抗議のメールが殺到したという。朝日も素粒子氏も不本意であり、そうと決め付けているわけではないと謝罪ともいいわけともつかぬことを言っているが、少々配慮が足りなさ過ぎるのではないか。ジャーナリストの中にも政治家や、高級官僚と同様、現場の苦労知らずが多いから、つい他人の気持ちを斟酌する思いやりが失われるのだ。
これに関わらず、何事ももう少しよく調査、分析し確認して、信念や相手の気持ちを慮ったうえで伝えるべき正しいことを報道する気持ちになれないものだろうか。