428.2008年7月15日(月) 「ボストン美術館の浮世絵」展がすごい。

 福岡滞在2日目は何をしようかと考えるまでもなく、地下鉄内の中吊り広告を見ていたら、3日前から8月いっぱい福岡市美術館で「ボストン美術館浮世絵名品展」をやっている。ありがたい。これは僥倖ではないかと、ホテルから大豪公園近くの美術館へ駆けつける。日本の浮世絵が一番揃っているのは、世界でもこのボストン美術館を措いてほかにはないと思う。

 昭和51年初めての文部省教員海外派遣団添乗員として、ボストンでいくつかの思い出があったが、フェンウェイパークのMJB・レッドソックスの試合観戦と並んで印象に残っているのが、この美術館見学だった。あまりに整然と、日本の美術品が丁寧に、そして上品に展示されている様子を目の当たりにして、一緒に見学した先生方もうなっていた。そして、「反って日本で保管するよりもきちんと管理されているのではないか」と仰っていたのが、言葉として頭に残っている。

 美術館はそれなりの入場者がいたが、概して年配者が多く、ここにも年配者の美術・文化への評価と憧憬を感じ取った一方で、ほとんど大学生らしい姿が見えなかったのは、大学生が授業を受けている時間という単純な理由だけでもなさそうだ。アルバイトに忙しい現代学生の勉学意欲とインテリジェンスが少しずつ劣化しているのだ。気になる傾向である。

 展示作品は、版画、肉筆画、版本、掛け軸等136点をボストン美術館所蔵品5万点、700品から借り受けたものである。これまで知るところでは、明治維新時に国内で日本文化否定論が沸き上がり、当時日本美術を評価していたモース、フェノロサ、ビゲローらが廉価で買い取ったと言われたが、実際には1876年アメリカ合衆国独立100年記念のボストン万博の際、日本が大量の美術品を展示して、そのままボストン美術館にお祝いの意味も込めて安く買い取ってもらったというのが真相のようである。

 それにしても、トランスシーバー・ガイドでじっくり見学したが、2時間近く経ってしまった。すべての作品を4章に分けて展示している。第1章浮世絵初期の大家たち、第2章春信様式の時代、第3章錦絵の黄金時代、第4章幕末のビッグネームたち、に手際よく分けられ作品に判りやすい説明が加えられている。いずれも和紙に描かれたものだが、その保存状況の良いのには驚くばかりで、江戸文化の高い水準を今日にまで正確に伝えてくれている。著名な鈴木春信に始まり、喜多川歌麿、東洲斎写楽、菱川師宣、葛飾北斎、安藤広重らの名画が目白押しである。「石部金吉」というのは、真面目な堅物だとばかり思っていたが、写楽の版画によれば「非情な悪役」だったとは初めて知った。気障のようだが、久しぶりに文化の一端に触れたような気がした。

2008年7月15日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : mr-kondoh.com