3387.2016年8月21日(日) 誤解される安倍首相の核に関する発言

 17日の本ブログに書いた安倍首相の迂闊な発言が、こんな魔訶不思議な話になっている。安倍首相がオバマ大統領の検討している核兵器先制不使用政策についてハリス米太平洋軍司令官に懸念を伝えた、とワシントン・ポスト紙が取り上げたことに、首相はハリス司令官とはそんな話をしなかったし、どうしてこんな報道が出てきたのか分からないと言い残してオリンピック閉会式出席のためリオへ旅立って行った。

 政治の世界では一寸先は闇とよく言われるように、言ってもいないコメントがメディアを通して煙に包まれたかのように伝えられるが、これもその類の話なのか。ことはわが国の防衛、核兵器に関わる重大な事柄である。こともあろうに外国の1メディアが日本の首相のコメントを誤って報道をしたということになる。それが事実なら日本政府としても、首相発言の真偽についてワシントン・ポスト紙に毅然として抗議し、事実をきちんと伝えるよう記事を訂正させるべきではないか。

 安倍首相の一貫したスタンスは、5月に広島を訪れたオバマ大統領の演説を称えてともに核兵器のない世界へ向けて努力を重ね、唯一の被爆国として非核3原則を堅持し、核不拡散条約(NPT)体制の維持、強化の重要性について訴えていくという筈だった。ここには、冒頭の発言について確かに触れてはいない。だが、首相を取り巻く周囲、特に外務省高官のひとりは「核廃絶は長期的目標として掲げるが、もし米政権が核の先制不使用を宣言すれば、日本を守るアメリカの抑止力は弱体化する」と述べていたそうだが、軽薄にメディアに漏らしたことが首相の発言として伝えられたと言えないこともない。首相の発言はこうした雑音がジャーナリテイックに利用された恐れはある。

 広島市内に住む被爆者が、口先だけなら何でも言えると言っていたことが、被爆者の心を傷つけていることに気がつくようでなければならない。これでは益々国民から信頼されないし、安倍内閣の薄っぺらな中身が益々薄く見えるではないか。

 日本政府が核問題についてどこまで本気になって考えているのか、ひとつの試金石となる催しが今ジュネーブで開かれている。同地で開かれている国連核軍縮作業部会が、核兵器禁止条約の締結交渉を来年中に始めるよう国連総会に勧告する報告書を賛成多数で採択した。しかし、ここでも日本の態度は誤解を生み、日本の核に対する理念が理解し難い形で伝えられている。

 つまり核兵器禁止条約を巡って2017年に交渉を開始することを支持した国が約100ヶ国あったのに対して、慎重、或いは反対を唱えた国が33ヶ国もあったのである。禁止条約は安全保障のバランスを崩して危険と主張したのは、核保有国9ヶ国とアメリカの「核の傘」の下にある国などの24ヶ国である。オバマ大統領と同調した安倍首相の言葉から推測するなら、日本は当然100ヶ国の国と同意見の筈であるが、そうではなかった。提案に対して正面から反対意見を提示し難く、棄権を選択したのである。明らかに反対派のアメリカに同調したのである。

 安倍政権の本心はどっちなのか。被爆者の気持ちとかけ離れた政治を核の世界でも行おうとしているのではないだろうか。

2016年8月21日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : mr-kondoh.com