昨日のブログ「自衛隊航空幕僚長の勇み足」を読んだ高校の同級生・呉忠士くんから感動的なメールをもらった。彼も田母神幕僚長の論文に当然批判的であるが、戦争遺族だったということは初めて知った。彼のご養父はかつて古代ギリシャ文学の碩学だった故呉茂一東大教授であるが、実の父上は戦時中撫順で病院勤務され、その後徴兵されて沖縄で戦死されたという。遺族としては当然であるかも知れないが、田母神氏の極右の論理が呉くんを始め多くの人々から理解されたり、共感を得られるわけがない。
今朝の朝日の「天声人語」でも「社説」でも、田母神論文はぼろくそだった。前々から奇矯な言動は目立っていたらしい。しかし、それが憲法に触れる発言であっても不問に付され制服組のトップにまで上り詰めた。これでは文民統制なんかまったく関係ない。制服組の人事については、政治家や制服組の事務官がまったく口出しできないという。しかし、シビリアン・コントロールの視点で言えば、これは実におかしい。社説では、この仕組みを抜本的に改めない限り、組織の健全さは保てないことを示していると書いている。その通りだと思う。
NHKスペシャル「日本をアメリカに売り込め」を見て感じたことがあった。この番組は、ワシントンの日本大使館がアメリカの知日派の政治家や有力シンクタンク研究員に対して日米同盟の緊密化を図り、基盤を固めたいとの意向のもとに作られたドキュメント報道である。この背景には、明らかに中国の強力な存在感がある。アメリカが日本より、中国を重視し出していることは紛れもない。
しかし、アメリカのひとりよがりの対日姿勢の背景にはアメリカの狡い利己主義、日本のアメリカ従属観、そして日本の押しの弱さがあると思う。日本にはアメリカにはっきり物を言えない軟弱さがある。今日のドキュメンタリーを見ていても、お互いに強固な同盟関係にあるので、まあうまくやりましょうというのが結論であるが、その直前になって安全保障に積極的になって欲しいとアメリカが釘を差す有様だ。つまり、イラク戦争にも、アフガニスタン対テロ作戦にももっと協力しろというのがアメリカの本心である。日本が国際協力にもっと力を入れないとアメリカはもちろんヨーロッパ諸国の信頼を失い、アジアでも日本の求心力は衰えると半ば脅迫している。どうして日本はアメリカの言いなりになってこういう軟弱外交のスタンスをとり続けているのか。日本が自分の主義主張を押し通す場面はいくらでもある。実際イラク戦争やアフガニスタン駐留はアメリカの論理でアメリカが引き起こした戦争ではないか。自国の戦死者が増えたからと言って、その代役を日本も少し負担しろというのは少し虫が良すぎるし、身勝手すぎるのではないか。これらの点について日本は歯に衣着せずに物を言うしたたかさを身に着けて欲しいものである。それが外交官の職務ではないだろうか。