1週間ほど前から郵政事業を管轄する鳩山邦夫総務大臣が、日本郵政が所有する「かんぽの宿」と称する、かつての簡易保険契約者利便のために作った宿泊施設のオリックスへの一括売却に待ったをかけたことが物議を醸している。
新聞記事に掲載されるだけでなく、大新聞の社説でも情報公開せずに自論だけを主張する双方に対して厳しい指摘がなされている。そもそも鳩山大臣は日本郵政が郵政民営化懇談会座長の役を務めた、宮内義彦氏が会長を務めるオリックスへ宿泊保養施設を一括売却する取引は、出来レースであり国民は納得出来ないし、売却価格も安すぎると怒り出した。70施設で総額109億円という売却価格は、確かに土地、建物を併せた簿価2,400億円から考えれば破格のビッグセールである。遂に鳥取の施設に至っては、転売の過程で1万円で売却したものが、老人福祉施設として6千万円で購入されたという話まで明らかになった。他にも怪しい秘密が隠されているのではないかと今や疑心暗鬼を呼んでいる。濡れ手に粟で5,900万円を設けた仲介の不動産業者とは現在連絡が取れないというデタラメぶりもこの取引に影を落とす。業者の選定に当っても不明瞭な闇の部分が隠されていたのではないか。
大臣の言い分も一応筋が通っているが、感情的に主張しているだけで正確な資料や裏づけが示されていない。ただ、この不透明な取引が調査されるにつれ、少しずつ事実が明らかになってきたのは、大臣の功績?と言ってもいいだろう。
今や民間会社となった日本郵政にもそれなりの言い分があるらしい。施設はひとつずつ売却していたのではとても時間がかかり、しかもほとんど商品価値のない施設には買い手がつかない。いつまでも塩漬けにして、赤字を垂れ流すわけにもいかない。1日も早く処分をしたい。まあこんなところだろう。
それにしても住友銀行頭取まで務め上げた日本郵政・西川社長にしては拙速に過ぎたのではないか。銀行マン上がりにしては勘ぐりたくなるパフォーマンスである。噂される通りオリックスに対する審査が甘かったのではないかと考えざるを得ない。この取引に私情が挟まれることはなかっただろうか。
どうも銀行というところは、経済が順調な場合は表沙汰になることは少ないが、一旦頓挫すると民間企業の諸悪の根源であると思わざるを得ないことが少なくない。机の上だけで資金を動かし、利益を得る。現場で苦労する労働者の気持を忖度できない非情な一面がある。そういう長年の慣習が、銀行マンの小賢しく、ずるくて利己的な性格を作り上げるのではないか。
鳩山大臣派と日本郵政の言い分がガチンコ勝負になった。日本郵政も強弁は止めたように見えるが、巻き返すことも考えているのではないだろうか。言いたいこと、考えていることをこの際お互いに公開の席で主張しあってみてはどうか。そうすれば、後ろめたいことは出来ないし、国民は納得する。つけ加えれば、この問題の発端は、これだけ多額のムダ使いをしながら、逃げまくり、責任もとらずに「渡り」を繰り返していった、厚生高級官僚の実行責任にある。その責任についても今改めて追求されるべきだと思う。