644.2009年2月16日(月) 充実して実りの多い旅だった。

 昨夕宿泊した和多屋別荘は、嬉野温泉でも名湯で建物も一段と高く、ランドマーク的な存在で、一昨年には秋篠宮殿下が滞在されたというこの地の名門旅館で、設備、サービス面で行き届いている。ご自慢は美肌の宿と自称しているだけに、その湯を目当ての客も多いと聞く。肌がぬるぬるするのは、温泉の効用か、でも不覚にも湯船でひっくり返ったのもそのぬるぬるのせいである。滑りやすいので注意が必要だ。

 今日は個性的な日本酒醸造元、嬉野温泉の井手酒造と唐津市相知の小松酒造を見学した。前者は女社長の下で「虎の児」という銘酒を造っておられる。後者は「万齢」という酒を生産しておられる。特に感銘を受けたのは、小松酒造の小松大祐社長の説明だった。東京の文系大学を出てから6年間證券会社に勤めた後地元へ帰り、一旦は酒造会社を止めていたが、復活させた苦労話だった。蔵で具体的に、保温、木桶の使用、麹室、圧縮用船、等々について分りやすく説明してくれた。今人気があるからと安易に日本酒から焼酎生産へ切り替えることはしないと言っておられた。奥さんも酒造りに興味があって一緒になったというだけに、夫婦仲良く堅実な経営をしている姿が輝いて見えた。

 経営者の話を分析してみると、日本酒造りは家内製手工業で、愛情を込めて細やかな神経を払い、身の丈を考えて経営すれば、右肩下がりの酒造産業ではあるが、何とかやっていけるのではないかと思えたことである。やはりその基本は、人ではないかと思う。酒造りに情熱を注ぎ込み、根気良く、研究熱心ならばいずれ前途は開けるのではないかと感じた次第である。

 酒の他にも、今日は陶器の町・有田を訪れ、14世柿右衛門記念館を見学した。他方で有田について知らなかった一面を見せてもらった。有田が古く伝統的な町の佇まいを重要文化建築物として保存するために、簡単には増改築が許可されなくなった。風情のある有田の町を後世に残そうというのである。確かに町の中心道路に面した商店街は、このまま自由にリニューアルをやったのでは特徴は消え失せるだろう。

 有田の伝統を残そうという試みは、今日いただいた昼食などにも典型的に見られる。「有田まちづくり女性こんわ会」というボランティア団体が、町屋を借りて「小路庵」という食堂を経営している。毎日オープンしているわけではないとのことだった。さすがに土地に詳しい佐賀県の2人のスタッフがスケジュールを立ててくれ、この「小路庵」で食事をアレンジしてくれた。手書きのお品書きに、こんわ会が土地で取れる自然の食材を考えて、料理した「ひいなご膳」という定食は、ユニークで気持の篭ったものだった。素人っぽく、それでいてきめが細かく多彩な品は、大変珍しいものだった。こういう一般住民からの地域おこしの動きは、徐々に町全体を活性化させる起爆剤となるだろう。

 2日間に亘る酒のペンクラブの旅を終え、佐賀空港から羽田へ予定通り帰ってきたが、中々充実した旅行だった。普通では見ることが出来ない醸造元を数箇所も見せてもらい、佐賀の酒もたっぷり味わうことができた。醸造元のほかにも、有田焼の本家を訪れ、この古い有田の町の町おこしの息吹も感じた。値段的にも極めてリーズナブルだったし、土地の人間でなくては知りえない企画の妙を味わわせてもらった。佐賀県東京情報センターの西岡さん、下平さん、お世話になりました。ありがとうございます。

 みんなで納得!みんなが満足!

2009年2月16日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : mr-kondoh.com