金融危機と経済不況により政府が補正予算を組んで財政出動した経済対策には、考え方としては基本的に納得出来るところはあるが、これに族議員が暗躍して群がり、あれもこれもと支出項目が増えバラマキ予算になった傾向は否めず、元々苦しい国家財政のわが国をいよいよ大借金国にしてしまっている。しかも、今後財政黒字国へ回帰する見通しも見えず、このままでは国は破綻することは自明の理である。これを政治家と官僚がそのまま放置して、益々国家財政の足を引っ張り、国民にやる気を失わせるていたらくである。
それでも流石にこれでは不味いと思ったのか、漸く経済財政改革の「骨太の方針」素案が示された。
それによれば、とりあえず基礎的財政収支を黒字化へ持っていこうとの考えである。すでに、小泉内閣時代に決めていた11年度内基礎的財政収支黒字化目標達成の可能性が消え、同時に決めていた社会保障費の削減も無理だと考えられ、根本的な計画練り直しと発想の転換を求められる事態となった。
ではどうするのか? つまるところ財政再建のためにはなりふり構ってはおられず、消費税の値上げしかないということである。現在国と地方の債務残高はトータルで816兆円である。当面この抑制が柱である。試算によると11年度から消費税率を段階的に引き上げて17年度に12%にした場合、基礎的財政収支は18年度に黒字化するという。結局最悪で消費税は12%にまで引き上げられるということだ。しかし、どうやっても国民の負担である日常経費にかかる消費税の12%はきつい。現在の5%の2.4倍である。じわっと利いてくるような気がする。心配なのは、あの小泉政権下の骨太でさえ実行出来なかったものが、誰が次期首相になろうとはたして実行出来るのかどうかということである。あくまで、利益誘導の悪辣な政治家が関わらないということと、官僚が真面目に国民のことを考えて仕事をするという前提条件がMUSTである。
それにしても朝令暮改ばかりで嘘つきの政治家と、上司の顔ばかり見て怠けながら仕事をする役人がいるようだと、また元の木阿弥である。
ゼミ仲間の池田博充くんと久しぶりに銀座の小料理屋で食事をした。彼も昨年会社の要職を離れ割合自由時間があるという。相変わらず現実社会に問題意識を持っている。青土社から出版された弁護士・中村稔著「私の昭和史」のコピーをもらった。中村氏の父は予審判事だったが、ゾルゲ事件で逮捕され処刑された尾崎秀実について「自分が出会った日本人の中で最も偉いと思ったのは尾崎秀実、外国人ではリヒアルト・ゾルゲだ」と述べていたそうだ。コピーはその件を書いた部分である。興味深い内容のようだ。