1年ぶりに多摩大学でジャーナリスト・江川招子氏の講義を聞いた。昨年の講義が面白かったので、期待していたが、正直に言って内容的には昨年ほどの面白さはなかった。しかし、中々説得力のある魅力的な話しぶりで、近年メディアが抱える問題、取材の現場の苦労話を聞かせてくれた。また、想定外な話も聞いて興味は尽きなかった。題して「新聞の読み方・テレビの見方」である。
今日の講義で江川講師はいくつかの問題点を提起されたが、大きな問題としてマス・メディア業界全体に、不況の影響による広告量の減少、それが新聞の頁数の減少となり、記事より写真が増える傾向にあると指摘された。
実際今朝の朝日などはかつては考えられなかったような2流、3流の広告が載っていた。メディア内部の問題としては、①「週刊新潮」の誤報、というより意図的とも思える朝日新聞神戸支局員殺害事件のニセ犯人問題、②奈良県少年放火殺人事件、を例証された。現在事件の情報源が罪に問われるケースが深刻になっている。同時に、「SLAPE」と呼ばれる公的発言を封じる行為が問題視されている。例えば、真実を究明した結果、逆に裁判に訴えられた場合、対抗上弁護士に相談せざるを得ない。時間のやりくりも大変だが、それ以上に高い弁護士費用を払えないケースが出てくる。講師自身もオウム真理教から坂本弁護士殺害事件に関連して、訴えられた体験を話された。それが行き過ぎるとジャーナリストもつい無難な記事を書く傾向に陥る。こういう流れをどう食い止めるか。
また、広告掲出企業を悪く書かない傾向も見えてくる。最近では一部にかなり批判されたトヨタの奥田氏とキャノンの御手洗氏のメディアに対する嫌がらせ発言の例がある。
怖いのは、広告会社が広告を作る際、広告会社のイメージで作る場合であると非難していた。外国では、湾岸戦争やユーゴスラビア解体直前の恣意的なCMが戦争を引き起こす結果になったと、「戦争広告代理店」とまで呼んで糾弾しておられた。現在の傾向としては、「見るものが欲しがるものを出す」ということと、「何事も短く」というのが時代の風潮であり、キーワードのようである。
考えてみるとこういう風潮が進むと、マス・メディアは徐々に内部崩壊していくのではないか。広告会社が戦争を仕掛けるとはまったくもって考えたことがなかった。