鳩山首相が来年度一般会計予算の概算要求の過程で、赤字国債増発を容認することを示唆した。来年度予算は今各省で策定中であるが、トータルでざっと90兆円を超えそうだと推測されている。冗談じゃない。今年度の当初予算が88兆円だったことを考えれば、この不景気の中で歳出削減は当然であり、本来歳出が増えること自体おかしいのではないか。
もちろん民主党はマニフェストに新たな選挙公約を盛ったので、それらに掛る費用を考えれば場合によっては歳出が増えることは考えられる。だが、民主党は選挙前マス・メディアに対して財源不足を突かれた際、ムダを廃止して捻出すると言っていたのではなかったか。こんな好い加減な気持ちでは、財源捻出の根拠が甘かったと言われても仕方があるまい。もっと困るのは、財源不足だからと言って、いとも簡単に赤字国債を発行すると言及したことである。これでは、前々から言われている財政健全化が反対方向へ向かい、いつまで経っても解決しない。少し無責任ではないか。
もうひとつ気になるのは、鳩山首相のリーダーシップ不足である。発足1ヶ月を迎えて新政権の滑り出しは、国際的には鳩山首相夫妻の存在感が抜群で、国内的には前原国交相と原口総務相、亀井金融担当相が目立った。しかし、その後国内における首相の言動は急激に影が薄くなり、最近ではその存在感さえ感じられなくなってきた。国家戦略室や、行政刷新会議も予算策定で活躍しているようだが、それは首相直属の組織である。にも関わらずそこでもあまり存在感が表に出ない。首相は、各大臣間の意見が合わなかった場合、調整役として出るべきであるのに、それでもお互いの大臣に任せっきりだからである。もう少しリーダーシップを発揮して民主党の顔として存在感を表さないと、民主党員の心が段々離れて、信頼感が薄れていくのではないか。そして民主党を低落傾向へ向かわせることになるのではないか。