このところ連日報道されている沖縄の普天間米軍基地移設問題が、とりあえず結論先延ばしということになった。アメリカという日米同盟の相手国との外交交渉がその先にあるだけに、日本だけの都合で落着というわけにはいかない。加えて基地のある沖縄県の事情もある。
最大の問題は、スタートから関係筋それぞれの思惑にずれがあったことである。当初は現在の普天間基地を名護市の辺野古沖キャンプ・シュワーブへ移設することは日米間で合意していた。同時に、沖縄の米軍海兵隊員8,000人のグアム移転も決まっていた。にも拘らず、民主党は先の総選挙のマニフェストに、普天間は海外移設、少なくとも県外移設すると約束した。この約束実行について、鳩山民主党は事前にどの程度の自信があったのだろうか。それほどの成算はなかったのではないか。新政権発足後慌てて実行策を立てたような気がする。それは、海外・県外移設を前提に、あれもこれもとアイディアを練った。連立を組んだ国民新党と社民党からも、マニフェストの実行を責められ、結局可能性はどんどん狭められ行き詰ってしまった。それが今日の結論先延ばしではないか。
しかし、この先延ばしだって極力早い結論を求められている。アメリカにしても辺野古への移設を前提に海兵隊を移動させる計画が狂うことで、来年度の連邦政府予算に移転費用を組み込めるかどうかの判断を迫られているらしい。アメリカから不信感を持たれ、現行の移設案以外は考えられないとまで言われ、挙句の果てには日米同盟にひびが入りかねないとまで言われている。
この無様な国内対応と対外折衝は、鳩山政権のあやふやな政治哲学と決断力の欠如と言われても仕方あるまい。この行き着く先はどうなるのか。まさに鳩山首相と民主党にとって正念場である。
鳩山政権が抱える新たな問題も浮上した。来日した中国の習近平・国家副主席が今日天皇陛下と会見したが、その決定に至る不透明な経緯が物議を醸している。天皇との接見には、少なくとも会見の1ヶ月前までに宮内庁に伺いを立てるしきたりになっているが、習副主席のケースはその後の申し出だった。それが、会見可能となった背景に、鳩山首相からぜひにとの希望が平野官房長官を通して宮内庁へ伝えられた。一旦は無理と見られた話がこれによって復活し、この経緯を不満に感じた羽毛田宮内庁長官が記者会見で不快感を表明した。
この後がぐにゃぐにゃである。皇室の政治利用ではないかとメディアは喧しい。背後に小沢幹事長の強引なねじ込みがあったと噂されたが、小沢氏はむしろ羽毛田長官を憲法論まで持ち出し、内閣が決めたことを一役人が批判したと烈火の如く怒った。
しかし、小沢氏の憲法論は根拠が薄いし、国民を納得させない。本人は復活に圧力をかけたことは否定しているが、直前に650人を引き連れ中国へ乗り込んで胡錦寿国家主席ら中国首脳陣と会談していた状況を考えると、小沢氏が会見を請け負った可能性は充分考えられる。真実は分からないが、天皇会見は政治主導でとか、宮内庁の専権事項などという問題ではなく、公平に考えても民主党のやり方に小沢氏の力が影響していると考えるのが普通ではないか。もし仮にそうだとするなら小沢氏は少々思いあがっていないだろうか。
鳩山首相もこういう問題で躓いていると、内閣も倒産してしまう恐れがある。