駒沢大学の最終2時限の講座があり、特にいつも考えさせられる清田義昭講師の「出版周辺」の授業ではビデオ放映はなく、過去30年の出版物の販売傾向と今年度の出版界10大ニュースについて話をされた。
前者については、1976年から2008年までの出版点数と出版実売総金額、返品率について表を示して説明されたが、76年には販売金額が1兆円だったのが、ピーク時の96年には2兆7千億円にまで達した。それが08年には2兆円をやっと超えるところまで落ち、恐らく今年度は2兆円を割り込むだろうと悲観的な予測をされた。特に雑誌類の落ち込みが激しい。
その原因のひとつとして、週刊誌等の取材に個人情報保護法施行、プライバシー侵害に対する訴訟問題等があると指摘されていた。個人的な事件やスキャンダルについて、取材側が突っ込んで記事に出来ないことが、興味を薄れさせ週刊誌等の売れ行き不振につながっている。かつての「チャタレイ夫人の恋人」「愛のコリーダ」の猥褻裁判騒ぎも時間が経つと、実際には容認されたかのように世間であまり騒がれなくなる。どこまで取材して書くか、この辺りのせめぎあいが勝負になると話された。
後者については時間がなくあまり詳しく説明されなかったが、どんなニュースが話題になったのかと気になった。いただいた「出版ニュース」12月下旬号にその10項目が載っている。
上位3つは、①「1Q84」224万部、発売前の予約でベストセラーに、②出版業界の再編加速、大日本印刷の主導で、③グーグル検索和解問題で論議、日本は対象外に、となっている。やはり、村上春樹は圧倒的である。ゼミの池田くんの務めている大日本印刷の出版業界における存在感も迫力がある。
終ってから前回の授業で話があった懇親会ということになった。お世話役の女性が下見まで済ませて近くの居酒屋に予約をしておいてくれた。事務局の宮本女史にまで声をかけて参加させてくれた。彼女は調布市の自宅から毎日50分かけて自転車で通っているという。現役学生はひとりしか参加しなかったが、9人が参加して出版業界の内情や、清田講師の経歴なども聞かせてもらって懇親の実を深めることができた。清田講師は出版業界では、著名の方でマス・メディアにもしばしば登場される。元々宗教家だったが、「出版ニュース社」社長に就任して、16年目だそうだ。現在66歳だが、今の職業をやってきてまったく悔いはないと自信を込めて仰っていた。
清田講師は後期から担当したので、前期担当の柴野京子講師と話し合いしながら、授業を進めてきたと話しておられた。これまで社会的な問題のビデオを放映してきたが、それが受講生に良かったのかどうかという点について、しきりに気にされていた。それほど気にされることはないと思うのだが・・・。個人的に私も尋ねられたが、私にとっては貴重なビデオを観ることが出来たし、改めて社会的な問題について関心を新たにしたので、授業としては良かったと思っている。カリキュラムの内容については、担当講師が検討されてご自分なりに思うようにやられればそれで良いのではないかと思う。
千葉県職員の不正経理事件が明るみに出てからかなりの時間が経つが、総額30億円という巨額の不正事件に、在任中の責任を追及されかかっていた堂本暁子・前知事はいずれ自分の態度もはっきりさせねばいけないだろうと直後の記者会見で他人事のように語っていたが、その後何ら明確な対応もしなかった。どうなったのか、最も責任を負うべき立場の人間が逃げ回っているのではないかと疑っていたが、今日処分が発表され、新たに見つかった不正分を含めて、何と2,245人もの職員に処分を行った。その中に前知事に対する返還金も公表され、千葉県は前知事に対して1千万円を請求することになった。
杜撰というかお粗末な経理処理である。最高責任者の知事が知らん顔でやり過ごそうとしていたところ、運悪く?見つかってしまった。当然の報いであるが、堂本氏の同義的責任は重い。こういうみっともない事件はなくしてもらわないと納税者は溜まったものではない。