韓国を旅行している間に、歌舞伎役者・市川海老蔵が先月末に犯した暴行事件のお詫び記者会見が行われたと旅行グループのひとりから聞いた。昨日の朝刊を読んでみると海老蔵は無期謹慎することになったという。当然だろう。梨園の名門に生まれた名声を鼻にかけ、好い気になって過去には艶聞を振り撒き、あれだけ酒乱で世間を騒がせ、公演にも穴を開けて多くの関係者に物心両面で大きな損害を負わせた。常識的にはとても考えられない破廉恥な行動に、同情の声はまったく聞かれない。すべて社会人として未熟な海老蔵の思い上がりと甘え、社会的常識と責任感のなさから生じたトラブルである。身近の年長者らや成田屋一門の指導と教育が充分でなかったことも影響していると思う。ここは冷静に猛省を求めて生まれ変わるつもりで再起して欲しいものである。
それにしても世間一般に非常識な若者が目立つようになった。経済力の向上に伴ってモラルや倫理観の教育が充分なされていないからではないか。
それに関連して6日付朝日夕刊によると、アメリカへ留学する日本人若者の数が激減している。つい最近ちょっと気にかかるニュースとして伝えられていたが、積極的に海外へ出ようという前向きな若者が極端に減っているようだ。若い頃より外向き志向だった私にはとても信じられない。それほど今の若者が内向き志向に偏り、海外で学び自分とは異なる国々の人々と切磋琢磨しながら成長しようとする若者が減少しているのは嘆かわしい。
因みにアメリカへの留学生の対前年国別増減率では、中国の30%増、サウジアラビアの25%増に比べて日本人は15%減である。絶対数では、トップの中国128千人に次いで、インド105千人、韓国72千人、カナダ28千人、台湾27千人の次が日本の25千人である。ここでも韓国に圧倒的な差をつけられている。才能を開花させるためにアメリカ留学が絶対的に重要ということではないが、日本が力を発揮した1994~98年には日本人の留学生数はトップだった。そのことを考えてみると、まさに今の日本が行き詰った経済と国民の閉塞心理を如実に示していることになるのではないだろうか。
今日裁判員制度に関して2つ異例の判断がなされた。ひとつは、鹿児島地裁で老夫婦を殺害したとして強盗殺人罪に問われ死刑を求刑された被告が、無罪の判決を得たことであり、もうひとつは福岡地裁で暴力団員の一審判決に裁判員を採用しないと判断したことである。後者は裁判員に指名された市民が暴力団から仕返しされる可能性を排除した裁判所の親心と言われている。それにしてもいずれも初めての判断であり、早くも専門家や識者の間で論議を呼んでいる。新しく導入された裁判員制度であるが、中々一筋縄では行かない。一般には裁判制度に関する興味と関心が高まったが、当事者にとっては頭の痛い問題だろう。これからも乗り越えなければならない多くの課題や難問が表出されるものと思う。