1349.2011年1月22日(土) 中国とアメリカにとって損得はどっち?

 昨日独立行政法人・国民生活センターへ送付した寄稿について、編集者からその内容を好意的に評価するメールをもらい、発行誌のプロフィールに拙著の1冊を紹介してくれることになったので、「停年オヤジの海外武者修行」を紹介してくれるようお願いした。同書は先日発行元編集長から近い内に電子書籍化を検討すると聞いた。拙稿の記事に沿った写真と表も掲載してくれることになった。

 さて、鳴り物入りで訪米して持論を展開していた中国の胡錦濤・国家主席が帰国の途についた。米中両国ともに相互依存を確認した。だが、これまで不満を抱いていた点については軽く触れるだけで追い詰めることまではしなかった。何か奥歯に物が挟まったような首脳会談だった。人権、軍事、北朝鮮問題等については懸念を表明するだけで解決へ向けた議論をするところまでは行かなかった。

 それに引き換え、経済、貿易問題に関する話し合いでは両国ともかなり積極的だった。中国はアメリカとの協調関係を強めるために、アメリカが中国に対して抱いている不満を解消すべくアメリカの対中貿易の赤字削減に協力することを約束した。直ちに航空旅客200機の購入を含む3兆7千億円の商談を成立させ、現在の対米輸入額を5年以内に現状の1千億ドルから2千億ドルに倍増すると表明した。オバマ政権の掲げる「雇用創出」と「貿易赤字の削減」に協力してオバマ大統領の顔を立てるジェスチャーを示したわけである。2009年にアメリカから中国への輸出は、690億ドルだったのに対して、輸入は何と2960億ドルで、アメリカの対中貿易赤字は2270億ドルに達していた。

 これで経済問題上残る課題は安過ぎる「人民元」の切り上げである。ともかく表面的には大きな問題は噴出すことはなかった。

 今日アメリカのみならず世界が中国に対して一番懸念しているのは、中国軍部の急速な勢力拡大だと思う。軍事力もアメリカに次いで世界第2位のポジションにある。強大化する中国軍は、文民統制どころか、益々その権力を強めているようだ。最近の中国海軍の東シナ海、南シナ海周辺海域への進出に伴う拡張主義・覇権主義は軍が自分たちの思い通りに動き出した表れではないかと心配される。今や党も軍に対しては言論抑圧を強制出来ない不安がある。このまま軍部が力を蓄え、党・政府の意見を聞かなくなったら一気に暴走し、強大な軍事国家となり、軍事力をバックに国際社会において無理難題を振り回しかねない心配がある。西太平洋で中国がその存在感を強めれば強めるだけ周辺諸国にとっては脅威であり、アメリカにとっても重大な脅威となる。中国国内で一番心配なのは、軍事クーデターによる胡錦濤・国家主席政権転覆による軍事国家の成立である。

 今回の胡錦濤・国家主席アメリカ訪問は、言いたいことを封印して経済面の摩擦だけを取り繕った印象が強い。多くの問題は積み残されたままだ。両国の対立が内部でマグマとなっていくのではないだろうか。

 それにしても5年ぶりのアメリカ訪問を国賓としての公式訪問と報道していたが、外国VIPの国賓扱いは1度だけのはずである。昔外務省の依頼でシンガポールのリー・クワン・ユー首相(現顧問相)の箱根旅行を手配した時、外務省担当者からそのことをはっきり聞いた。その時2度目だったリー首相の日本訪問は国賓待遇の準国賓だった。胡主席はその外交慣例まで、アメリカに打ち破らせてしまったのだろうか。

2011年1月22日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : mr-kondoh.com