やはり只者ではないと感じた。竹原信一・前阿久根市長の本音である。今日日本財団で開かれた構想日本のフォーラムはテーマが予告と少々変わり、「これからの地方議会のあり方」と題して、竹原氏のほかに穂坂邦夫・前志木市長、土井裕之・さいたま市議が出席し、いつも通り加藤秀樹・構想日本代表がコーディネーターを務めた。
それぞれ地方自治に関して経験の深い方々ばかりで、実体験から深みのある話を聞かせてもらった。竹原氏の話を期待したのか、200名ぐらいであろうか、聴講者はいつもより大勢で熱心に聞いておられた。質問者5人のうち3人が地方議員・元市長だったが、いま話題の竹原氏の発言に注目したのだろう。
地方政治に詳しい「NPO法人・地方自立政策研究所」理事長でもある穂坂氏を始め、皆さんが一様に同意していたのは、現在の地方政治が活性化せず、馴れ合い政治になっているのは、わが国の地方制度がすべて2元制に定められていることに原因があるという点だった。さらに言えば、わが国では自治省の元にすべての自治体が揃ってこの2元制を採り入れていることが問題だとも指摘していた。イギリスでは各自治体がそれぞれの自治体に合った制度、つまり1元制か、2元制のどちらを選択するかを住民が決めることも出来る。
竹原氏はこういうことも発言された。日本には身分制度が厳然として存在するが住民が気付いていないと度々発言していたのが印象的だった。それは、公務員という身分階級であり、好待遇に甘え権力を揮い、住民のための行政を行わないことを厳しく糾弾していた。これがため市長になったと繰り返していた。例えば、阿久根市民の平均年収は約200万円だが、市役所職員は約700万円だとその高給ぶりを非難していた。職員は既得権益と誤解しているし、議会と職員が癒着してお互いに利益誘導を行っているので、お互いを庇いあっていると厳しい指摘をされた。
メディアから流れてくる情報だけでは確かに分らない。竹原氏が市長選で敗れた直後に、敗れたのは市職員組合とメディアのせいだと語ったが、竹原氏のメディア観には相当深い不信がありそうだ。竹原氏は防衛大学校から自衛隊に入り正義感が強いせいだろうか、むきになって話していたが、今日の感じでは確かにメディアの責任もあるかも知れない。竹原氏の言うことはかなり筋が通っている。でも、やはり地方都市のやり方としては少々強引との印象は拭えない。例えば、市長就任直後になぜ副市長としてわざわざ県外から警察OBを連れてくる必要があるだろうか。これでは反って市民から反感を買うことになる。もう少し周辺事情を研究し、良き参謀を抱えてじっくり持論を構築してそれを訴え啓発していけば、市民から受け入れられる素地は育まれると思うし、再び世に出る機会はあると思う。このまま消え去るには惜しい人材だと思う。
それにしても約2年ぶりのフォーラムだったが、相変わらず加藤氏の巧みなコーディネーターぶりには感心した。流石「事業仕分け」を生み出した智恵者である。