今月18日にチュニジアで起きた政変以降、サウジアラビアやイェメンでも長期独裁政権に反対するデモが起きているが、その動きは昨日中東最大、8千万人の人口を誇るエジプトの反政府デモへと波及した。これまで国民が国家権力に抑圧され、ほとんど反政府デモが起こらなかった中東諸国内にデモの雪崩現象が起きたのは、いうまでもなくインターネットによる情報の交換が大きい。中でも最近脚光を浴びているフェイス・ブックの影響が最も効果的だったようである。他の中東諸国では連鎖反応を恐れて情報統制を強化して反政府の動きを最小限に食い止める手段を講じているが、観光立国のエジプトでは、外国人の出入りが夥しくそうもいかず、2009年の大統領戦後にイラン政府が取ったような強引な情報統制強化はとても行うことは出来ない。
長期独裁政権に一石を投じたチュニジア政変は、今や他の中東諸国を戦々恐々とさせている。とにかくこれらの国々は、サウジアラビアを始めとしてリビア、エジプト、アルジェリア等々長期独裁体制の国々の心胆を寒からしめている。特に、昨日勃発したエジプト国内のデモは多くの点で世界の注目を集めている。
その理由のひとつに、国内的にもムバラク大統領が1981年に政権に就いてからすでに30年の長い歳月が経過したことである。ちょうど文部省の教員海外派遣団の添乗員として、アメリカ・インディアナ州インディアナポリスに滞在中に、当時のサダト大統領が軍事パレードを観閲中銃砲で暗殺され、その生々しいニュースを実際テレビで観てショックを受けた。同地の教育委員会でもしばし話題となったほどである。あの事件直後に国際的には無名と言ってもいい、副大統領だったムバラク氏が大統領に昇格して30年という長い時間が経った。よくもまあ有為転変の世に長らく国家の舵取りをやってこられたなぁとその巧みな手綱捌きに感嘆するほどである。そのムバラク大統領は9月の大統領選で6期目の大統領に意欲を見せるか、息子に継承させるのか、或いはノーベル平和賞受賞者でもあるエルバラダイ・前国際原子力機関(IAEA)事務局長に職を譲るか、判然としていない。その最大のライバル、エルバラダイ氏の大統領被選挙権を剥奪しているというから、火種は残されている。
不思議なのは、あれだけ「民主化」を叫んでいるアメリカが、むしろムバラク政権を安定政権として支持するような声明を出していることである。その理由としてはエジプトがアラブ諸国の中では一番反イスラム原理主義的で、かつイスラエルとのパイプを持っていることがある。アメリカは中国政府に対してはあれほど民主化を迫りながら、エジプトのデモ弾圧に対してはトーンが落ちる。更に言えば、エジプト国内のデモはイスラム原理主義勢力に後押しされていて、根っ子でアルカィーダと通じているという理由から、反政府デモを支持する気がないようだ。
これでは結局、どこの国も、どの人もその場では、自分に利する道しか選ばないということではないか。
このままエジプトのデモを注目しつつ、同時にそれを支えるアメリカ政府の動きにも注視しなければならないということである。
ところで今日午後鹿児島・宮崎県境の霧島連山・新燃岳が噴火して周辺地域は火山灰に見舞われた。数日前から予兆はあったが、農家の畑には多くの降灰があり、せっかく作った野菜が出荷出来そうもなくなり、農民はぼやいていた。どうして宮崎県ばかり災難が降りかかるのだろうか。昭和35年夏軽井沢でアルバイト中に、浅間山が噴火して降灰があり、しばらくしてにわか雨が降ってどろどろの灰がアルバイト先の屋根や庭を台無しにした思い出がある。
さて、アメリカの大手格付け会社、スタンダード・アンド・プアーズ社が今日日本国債の格付けを、従来の「AA」 から「AA-」と8年9ヶ月ぶりに1段階引き下げた。日本は21のカテゴリーの内3番目にあったが、中国、サウジ・アラビア、クウェートと同じ4番目のカテゴリーに入った。
S &P社はその理由をわが国の1,000兆円に達しようという累積財政赤字と、民主党政権がそれを解消するための明確な財政政策を打ち出せないからであると述べている。われわれが以前から強く懸念していたごく当たり前のことをズバリ専門家に指摘されたわけだ。ところが、これに対して野田佳彦・財務相は「民間会社の言うことにいちいちコメントする立場にない」とまるで他人事のようであり、経済政策の進め方を批判されたはずの菅首相にいたっては「そういうことには疎いので・・・」とまったくノー天気なのである。国のリーダーがこれでは救いようがない。